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米国屈指の「物言う株主」が株主至上主義から転向した理由

「インパクト投資」とは何か
コロナ禍からの経済復興に、環境や社会課題の解決を組み込み、より良い成長の機会を模索する動きが世界中で広がっている。
このような流れは経済・金融にとっても無縁ではない。こうした中、注目を集めているのが「金融の力で社会の持続可能性を向上させる」インパクト投資だ。株主至上主義の従来型の資本主義でも、古くからある慈善活動の延長線上でもない、新たな経済活動の実状に迫る。
 

新型コロナが求める「BBB」とインパクト投資

候補者の正式指名が終わり、いよいよ最終局面へと向かう米国の大統領選挙。民主党の候補者であるジョー・バイデン氏が、新型コロナウイルスによる経済低迷のなか掲げたスローガン「Build Back Better(BBB)」をご存じだろうか。

BBBとは、災害などの大きな社会変化に直面した際、「より良い形での」復興を目指す考え方を指す。この言葉には、単に被害の前の状態に戻すのではなく、教訓を活かしながら、社会が抱える構造的な課題を併せて解決することが含意されている。バイデン氏の場合、コロナ禍による経済ダメージからの回復に併せて、雇用創造や気候変動への対応を政策の基本方針として公表している。

他方、EUが掲げるのは「グリーンリカバリー」だ。特に新型コロナによる経済的なダメージからの回復に際して、脱炭素社会への移行や災害や感染症に対するレジリエンス(回復力やしなやかに適応する能力)の向上、生態系や生物多様性の保護を同時に進めることが目指されている。7月に合意された欧州復興基金でも、環境や気候変動への対策は目玉の一つだ。

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BBBとグリーンリカバリーに共通するのは、コロナ禍を「より良い社会をつくる機会」ととらえていることだ。コロナ禍からの経済復興に、環境や社会課題の解決を組み込み、より良い成長の機会を模索する動きが世界中で広がっている。

こうした中、注目が高まるのが「インパクト投資」だ。インパクト投資とは、「社会的な課題の解決を図ると共に、財務的な利益の両立を目指す投資」を指す。

インパクト投資とは何か

インパクト投資が目指すのは、「金融の力で社会の持続可能性を向上させること」である。また、投資の持つ社会的価値を「社会的インパクト評価」として事前事後に評価・検証する点も特徴的だ。しかし重視するのは社会的価値だけではない。財務的な利益も同時に目指すという意味では、従来から存在する慈善的な寄付とは一線を画す。2007年に誕生した用語だが、ここ数年急速に認知度が上昇しつつある。

インパクト投資は、金融の持つ力を持続可能な社会づくりに活かすという意味で、ESG投資との共通性を持つ。しかしESG投資が環境(E)社会(S)ガバナンス(G)を投資におけるリスクとリターンを判断する材料として捉えるのに対して、インパクト投資は、「社会の持続可能性向上へのインパクト」を、リスク・リターンとは別に、投資判断の第3の軸に据える。投資の対象となるのは、あくまで「社会課題解決に意図をもって取り組む事業」であり、投資における社会的な意義や価値を意識した考え方だと言えよう。

インパクト投資の世界の市場規模は推計で約7150億ドル(約7兆8000億円)と試算されている。その規模は年々拡大しており、日本でも機関投資家や開発援助機関、大手金融機関が同分野への参画を始めている。