人を、自然を敬う。本当の美しさはそこ、という訴え

そして資生堂は今年、バウムという樹木を主役としたナチュラルコスメブランドを立ち上げている。驚異的な樹木のパワーを美しさに変えるラインナップ、木を使ったサステナブルなパッケージ、お手入れの前に部屋の中を森林浴の環境にする香り付け提案……ありそうでなかった樹木由来の未来形ナチュラルは、とてつもなくユニーク。こういう次世代ジャンルにおいても、資生堂はとてつもなくうまい。さらには肌にも環境にも優しいアメリカの人気ブランド、ドランク・エレファントを買収し、クリーンビューティーが常識となる時代への布石も打たれた。

ありそうでなかった樹木をテーマにしたナチュラルコスメのシリーズ。木を使ったパッケージは極めて印象的な上に、全く新しいリフィル提案で時代のクリーンビューティーに先駆ける。お手入れの前に森林浴をイメージさせる香りを部屋にスプレイして、肌にも心にも訴えかけるスキンケアを提案。

いずれにせよ、テクノロジーからナチュラルまで、アバンギャルドなメイク表現から50代からの大人の七難解決メイクまで、そして高級品からプチプラまで、まさにあらゆる分野で、全身全霊、当たり前のように一流であろうとする天性のラグジュアリーを持ったブランドなのだ。

しかしどんな時代においても物作りだけに偏らないところが、また真のラグジュアリーを物語る。とりわけ、日本の価値、日本の美徳を決して忘れない姿勢は、生まれながらのJAXURYと言うべきなのだろう。

その象徴が「ジャパニーズビューティーインスティチュート」。“日本の美の何たるか?”を世界に発信するプロジェクトである。日本の美意識を育ててきた資生堂の壮大な研究成果であり、心の有り様まで説いた美の教典。まさに世界に例を見ない提案である。化粧品メーカーは、ここまで献身的な美への提案ができてこそ、本当の使命を果たせるのだと改めて思い知らされる。

何より素晴らしいのは、「美しさには心が伴わなければいけない」という訴え。まさに“礼儀礼節を重んじる”世界に誇れる日本の美徳を、目指すべき美しさと丁寧に結びつけ「美は1つのおもてなし」なのだと訴える。だから所作のひとつひとつが、どこまでも丁寧で美しくなければいけないと説いているのだ。一方で、「人を敬い、自然を敬うこともまた美と直結してくる」とする教えで、自分を取り巻く森羅万象への向き合い方、つまり生き方まで正してくれると提唱する。

140年前のネーミングまで遡れば、古代中国の易経の一節「至哉坤元萬物資生」が社名の由来。「大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか。すべてのものは、ここから生まれる」といった意味を持つ。ジャパニーズビューティーインスティチュートは、この東洋の儒教的哲学が脈々と受け継がれてきた何よりの証なのだ。美の担い手としてなんとラグジュアリーなのだろう。世界の尊敬を集めるブランドとして、まさに日本の誇り、一人ひとりにとってかけがえのない存在である。
だから資生堂はJAXURY。生粋にして最強のJAXURYと言っていいと思う。

資生堂
www.shiseido.co.jp

PROFILE

齋藤薫(さいとう・かおる)
美容ジャーナリスト・エッセイスト。美容業界の第一人者にして、ファッションから社会現象までわたる幅広く深い視点と、常に磨かれ続ける美意識が、世代を超えて信頼支持されている存在。著書多数。