アメリカが直面している「文化戦争による分断」の現在地

大統領選におけるトランプ派と宗教保守
藤本 龍児 プロフィール

抗議デモで顕わになった「宗教差別」

では、平和的なデモを強制的に排除したうえで教会へむかい、記念撮影をしたことはどうか。これについてもトランプ派、とりわけその中核たる宗教保守は、やはり違う認識と考え方をもっている。トランプ大統領は、「自分は強制排除を指示していない」と弁明したが、それだけが理由ではない。

ワシントンD.Cでは前日まで暴動が起きており、この日の抗議デモも、いつ暴動に変わるか分からない、と見られていた。しかも、第二次世界大戦の記念碑や、奴隷を解放したリンカーンの記念堂までが荒らされている。いまや暴動はみさかいなく、BLMの理念すら裏切り、米国の歴史や遺産にまで攻撃をしかけている、と考えざるをえない。あのような対処は望ましくはないが、「大統領の警護」としては仕方なかった、ということである。

リンカーン記念堂に集まったデモ参加者たち(6月4日)〔PHOTO〕Gettyimages
 

なんといっても前日には「大統領の教会」まで放火されていた。教会での記念撮影は、迫害や偏見からキリスト教を守る、ひいては米国のナショナル・アイデンティティやその中核たる宗教的理念を守る、という姿勢を示すためのものだったのである。

たしかに、宗教者からの批判はあった。だが、米国の宗教勢力は、大まかに「宗教リベラル」と「宗教保守」に分かれている、ということに注意しなければならない。批判は「宗教リベラル」からのものであり、「宗教保守」は、トランプ大統領の言動を諫めるものもあったが、基本的には支持をやめたわけではなかった。

このトランプ現象を支えている宗教保守は、国民のおよそ3割を占め、とくに1980年代から大きな影響力をもつようになっている。共和党では、その支持を得なければ、大統領候補になれないほどの影響力である。

ただし、次のことにも留意しておかなければならない。岩盤支持層と言われる宗教保守も、けっして「一枚岩」ではない、ということである。仕方なくトランプ政権を支持している宗教保守も少なくないのであって、そうした人びとはトピックごとに是々非々で賛否をあらわす。ゆえに、時おり「一部が離反」だとか「支持率低下」といった報道が出ることになる。宗教勢力の動向は個別の事象ごとに見きわめなければならないし、大統領選ともなれば総体的に判断しなければならない。

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