アメリカが直面している「文化戦争による分断」の現在地

大統領選におけるトランプ派と宗教保守
藤本 龍児 プロフィール

安全な生活を守るために「法と秩序」を重視する共和党支持者がいることは理解できる。ルポルタージュなどを通じて、いわゆる「トランプ現象」の担い手である熱心なトランプ派についても理解が進んできた。とはいえ、軍を投入してまで平和的なデモを抑圧しようとする大統領を、なぜ支持し続けるのか。理解は難しい。

あるいは逆に、「岩盤支持層である宗教保守の一部が離反しはじめた」という報道もある。宗教保守は、トランプ派のなかでもいっそう理解しがたい存在であるが、トランプ政権から離反すると聞けば、それは当然だろうなどと思いもする。しかし、それも正確な受けとりかたとは言えない。

いったいトランプ派と宗教保守は、「黒人差別抗議デモ」をどう見ているのか。そこに焦点をあわせれば、両者の世界観も浮き彫りになってくる。

6月のBLMデモ〔PHOTO〕Gettyimages
 

「黒人差別抗議デモ」についての認識

抗議デモにたいするトランプ大統領の対処は、大きな失策だった言われる。とりわけ批難されたのは、6月1日の演説と行動であった。

演説では「軍の投入」について示唆し、その後には、「大統領の教会」とも言われるセント・ジョンズ教会までおもむき、聖書をかかげて記念撮影をしたのである。しかも、ホワイトハウスの北側にあるその教会まで行くために、途中にあるラファイエット広場にいた抗議デモの参加者を、事前に催涙ガスやゴム弾を使って排除したのであった。

かくて、トランプ大統領は黒人の怒りを理解せず、その思いに寄り添うどころか平和的なデモを武力によって抑圧しようとしている、と批判が高まったのである。さらには、セント・ジョンズ教会を管轄する聖公会の主教などからも「聖書や教会を政治利用している」と批難されてしまった。たしかに、これでは、失策というほかないだろう。

しかしながら、トランプ派はそうは考えない。ということはやはり、トランプ派は、よく言われるように差別主義者や強権主義者、あるいはファクトを見ない「ポスト・トゥルース」の世界の住人なのだろうか。どうもそうとは言い切れないのである。

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