2020.09.20
# アメリカ

アメリカが直面している「文化戦争による分断」の現在地

大統領選におけるトランプ派と宗教保守
藤本 龍児 プロフィール

この概念が宗教社会学者によって提唱されたことからも分かるように、文化戦争の基底には宗教的次元が横たわっている。実際、1976年の大統領選以降、「宗教」は大きな影響力を発揮するようになった。しかし、その動向は複雑で、混乱した報道も散見される。2016年の大統領選でも「宗教保守」がトランプを支持し、大番狂わせの原因の一つとなった。その後も「宗教保守」は、トランプ政権の岩盤支持層と言われている。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

深層にある文化戦争の分断を見きわめ、実状を理解するのは容易ではない。しかしそれは、2020年の大統領選においてもたしかに作用しており、「見えない分断」を生じさせている。ここでは、「黒人差別抗議デモ」を例にとることによって、文化戦争による「見えない分断」を浮かび上がらせてみたい。

「Black Lives Matter」を引き裂くもの

2020年5月、ジョージ・フロイド氏が白人警官によって死亡させられ、黒人差別に対する抗議デモが全米50州に広がった。警察をはじめ米社会のさまざまなところに、制度的にも観念的にも根強くのこる差別の問題があらわになったのである。

ただ、ここで考えたいのは、黒人と白人の間の、そして有色人種の間にもある分断のことではない。また、抗議デモを「ANTIFA」などの極左イデオロギーによる「暴動」とみる一部のトランプ派と、「Defund the Police」のように警察の解体まで求める一部の反トランプ派との分断のことでもない。

わたしが注目したいのは、抗議デモにたいする「一般国民」の認識や考え方についてである。そこにこそ、文化戦争による「見えない分断」が生じており、さらには「見えない差別」まで作用している、と思われるからである。

ロイター通信などの世論調査によると、国民の三分の二は抗議デモに共感している。たしかに、抗議デモがかかげた「Black Lives Matter(BLM)」という理念は、広い範囲で賛同された、と言っていいだろう。人種や党派を超えた協調をもたらしたとも言える。しかし、それにもかかわらず、抗議デモの深層には「見えない分断」があり、結局それがBLMへの賛同を引き裂くことになっていると考えられるのである。

「法と秩序」を回復するためには「軍の投入」までありうる、としたトランプ大統領の姿勢は、民主党からはもちろん、共和党の一部の有力政治家からも批判された。実際、6月初頭にCNNで示された調査では、トランプ大統領の支持率は4割を切った。ところが、共和党支持者の支持率は9割弱を維持し、ほとんど変化しなかったのである。この「岩盤支持層」と言われる人びとは、いったいどのような世界観をもっているのだろうか。これを理解しないままでは、ましてや密かに軽蔑しているだけでは、分断の改善はとうてい望めないだろう。

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