エルヴィン・ロンメル[Photo by gettyimages]

『独ソ戦』の著者も激オシ!英仏がもっとも恐れた、ロンメル将軍の素顔

「砂漠の狐」と呼ばれた軍人の軌跡
第二次世界大戦中、連合国がもっとも恐れたドイツの軍人、エルヴィン・ロンメル。彼の副官だったハインツ・シュミットがその素顔を著した評伝『ロンメル将軍』がこの度復刊された。2020年の新書大賞に輝いた『独ソ戦』の著者で、監訳を務めた大木毅氏が激賞した本書から、「砂漠の狐」の伝説が誕生した瞬間を紹介する。
 
1941年6月、ロンメル率いる「ドイツ・アフリカ軍団」は、イギリス軍が立てこもる地中海沿いの街・トブルクを包囲しつつ、戦略的要所であるハルファヤ峠とサルームを占拠していた。連合国が陸路からトブルクを解放するためには、この二拠点を攻略しなくてはならない。英のウェーヴェル司令官は「戦斧作戦」を立案し、拠点奪還を狙っている。戦局が緊迫する中、シュミットはロンメルとともに、トブルク近くの海岸に駐留していた…。

ドイツ軍の戦闘機の破壊力

「シュミット、起きろ!」と、ある朝早く、テントの入口から、ベルントが叫んだ。

「さっさと起きろよ――大きな船が、岸の間近で、メッサーシュミット機にやられているぞ」

「えっ」

私は足をひっぱられながら、

「またイギリスの小舟でも沈めるのに苦労してるんだろ」

「違う。本当だぞ。入口からのぞいてみろ。たぶんトブルクへ行こうとしてる船だ。起きろったら、起きろ!!」

せっかく、心地よく眠っているところを起こそうとするなら、もっといい手を考えろと、ベルントにいおうとした時、遠くで機関銃を射つ音がした。

「ほら、メッサーシュミット機が射ちまくってるぞ。嘘だと思うなら、そこにいるがいい」

ベルントの大きな頭が、入口から消えた。

私は海水パンツをはいて、2、3歩で、地中海の景色を遮ぎっている小さな砂丘を越えた。たしかに船だ――ベルントのいうほど大きくはなかったが、とにかく三本マストで機関付の船である。わが戦闘機3機が急降下し、全力をあげて船を攻撃していた。船上の軽対空火器が勇敢に応戦した。船は数海里の先にあるが、すべてがはっきりと眺められた。