父親になるのが怖かった男の「乾いた心」を満たしてくれた、子供の力

短期連載「娘と私の成長記録」(3)
仙田 学 プロフィール

「もう窓に近づいたらあかんよ。落ちたら痛い痛いなるから。ベランダでるのもやめよな」

寝る前にそう言うと、子どもは不思議そうにじっと私の顔を眺めていた。その日からアパートのベランダには絶対にださないようにしたし、引っ越し先は1階にした。

やがて次女が産まれ、子どもは長女になった。

下にできた子を構いすぎると、上の子はそれまで自分が独り占めしていた愛情を奪われたと感じて赤ちゃん返りをして、注目を引こうとすることがあるらしい。

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それを恐れた私は、何かにつけて長女を優先した。名前を呼ぶのも、抱っこするのも、おやつをあげるのも長女が先。外出するときには私が長女を担当し、抱っこもオムツを変えるのもご飯を食べさせることもしていた。

そのうち長女はとてもパパっ子になり、寝かしつけた後に仕事部屋に戻り、しばらくすると目を覚ましてパパがいないことに気がついた長女が泣きながら探しにくることがよくあった。

旅先の旅館で、タバコを吸うために部屋を離れようとすると長女が泣きわめき、その声が喫煙所まで、タバコを吸い終わるまで響いていたこともある。

逆に次女はママっ子で、ママと離れると泣きわめき、私の腕のなかにいると身をよじってママのところに戻りたがった。だが次女には、それでも抱っこし続けて慣れてもらうことをしなかった。

私は長女担当だったし、ふたり目なのでどこかで大雑把になってもいたのだろう。そのせいか、次女への接し方がうまく掴めずにいた。

はっきりと掴めたのは、次女が1歳の頃。次女とふたりでお菓子の空き箱で遊んでいたとき、とつぜん次女がニカっと、心から楽しそうに笑ったのだ。

――この子はこういうのが好きなんだ。

と思った途端に、次女の感情が胸のなかに流れこんできた。その日から、私は気持ちのうえで次女とも繋がれた気がした。