父親になるのが怖かった男の「乾いた心」を満たしてくれた、子供の力

短期連載「娘と私の成長記録」(3)
仙田 学 プロフィール

怖いとか恥ずかしいとか言っている場合ではなくなった。

子どもが夜泣きをすると、元妻と交代で抱っこした。立って抱っこして「上を向いて歩こう」を歌っていると寝るときもあったし、抱きながらベッドに座って上下に弾んでいるうちに寝るときもあった。

子どもの状況は刻一刻と変わっていき、昨日は通用したことが今日は使えなくなった。その変化に無我夢中で応じているうちに、私は嫉妬にかられはじめた。

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私に抱かれているときには大泣きしている子どもが、元妻に抱かれるとすっと泣き止む。

私は必要ではないのかなと思った。だが私がいなければ元妻は疲弊してしまう。なにより悔しかった。

 

そんなことを、当時勤めていた会社の上司に話した。すると彼はこう言った。

「泣くたびにお母さんに渡してたら、子どもは泣いたらお母さんに抱っこしてもらえるって学習する。それだといつまで経ってもお父さんに懐かないから、泣いても抱っこしいたほうがいいよ。お母さんには横にいてもらって、頭をなでてもらう。そしたら子どもは安心する」

実践してみると、私の腕のなかでママを求めて泣きわめくわが子を押さえつけているのは辛かった。

その横で頭を撫でている元妻も辛かっただろう。でも数カ月も経つ頃には、子どもは私の腕のなかで安心してくれるようになった。

次女への接し方がわからない

2歳の頃に、子どもが死にかけたことがある。

吉祥寺の雑居ビルの5階にある不動産会社で、私と元妻は引っ越し先候補の物件の図面に見入っていた。

するといきなり店員さんが、「危ないよ」と焦ったような声をあげた。

子どもは床に置かれた箱の上に立ち、窓から身を乗りだしていた。頭と上半身が窓の外にでている。私は走っていき、子どもの腰に飛びついた。

家に帰ってから、その瞬間のことが何度もフラッシュバックした。もしあのまま気づかなかったら、子どもは落ちて死んでいたかもしれない……そう思うと鳥肌が立ち、涙が流れた。