止まらない芸能人の「自死」「薬物」「退所」…いま芸能界に何が起きているのか?

不倫騒動をはるかに超える深刻さ
木村 隆志 プロフィール

個人間の格差と落差は広がる一方

各所に話を聞き、芸能人の自死、薬物、退所を掘り下げた結果、見えてきたのは、「個人間の格差や落差が広がっている」こと。

言動の自由度が増し、使えるツールが増え、活動の選択肢が広がったことで、稼げる人と稼げない人、強気な人と弱気な人、自信満々な人と不安な人、ストレスに強い人と弱い人、仕事に向き合う人と向き合わない人、誹謗中傷を受けやすい人と受けにくい人などの格差や落差が広がっている。

トーク力や演技力などのスキルが高くても、「芸能人として生きていくことが難しい」、または「芸能人として生きていく必要がない」と感じる人が増えているようなのだ。退所を選べる人はいいが、悲しいことにその選択肢を持てず、自死を選ぶ、薬物に依存するという道を選んでしまう人がいる。

また、恐ろしいのは、自死、薬物、退所という行動が連鎖しやすいこと。もともと不安や不満などのネガティブな感情は連鎖しやすいものだが、なかでも芸能界という特殊な世界で生きてきた同業者の感情は伝染しやすく、悪い意味での連帯感が芽生えやすい。

さらに、コロナ禍の重苦しいムードが、ネガティブな感情の連鎖をさらに促進。だからこそ芸能事務所のスタッフたちは、撮影場所の感染対策で同行可能人数が制限される中、「会える回数が減っているからこそ、できるだけコミュニケーションを取るなどの努力をしている」という。

 

ただ若いスタッフも多く、メンタルケアの専門家ではないため、彼らの頑張りにも限界があり、自死、薬物、退所を止めるためには、さらなる工夫と努力が求められている。

ある芸能事務所は、スタッフ向けの“傾聴と観察”“啓蒙と契約”などに関するガイドラインを作成したという。芸能人の話をよく聴き、細かい表情や動作の変化をよく見て、正しい知識を与え、契約書で自覚を持たせつつ自由の範囲を明白にする。

人間を商品にしたビジネスモデルである以上、今後も芸能事務所にはこれくらいの丁寧かつ慎重なマネジメントが求められていくだろう。裏を返せば、それができなければ、現在のような悲劇の連鎖を止められないのではないか。