「離婚して自由になりたい」

好きで結婚した相手ではなかった。妊娠し、仕方なく籍を入れた。生活をともにするうち、当初抱いた違和感はどんどん募っていった。
だから、結婚して10年目、元夫のほうからいきなり「離婚して自由になりたい」と言われたとき、保科礼子さん(仮名・41歳)にショックはなかった。すでに大嫌いになっていたので、むしろ、ありがたいくらいだった。

不安だったのは、お金だけ。当時、子どもは10 歳と6歳。時々パートはしていたが、その時点で礼子さんは専業主婦だった。そこからどうやって自立していったのか。結婚から離婚、いまに至るまでの軌跡を聞いた。

上條まゆみさん連載「子どものいる離婚」。自分も疑問を抱いていた夫婦関係の中、相手から急に離婚を言い渡されたら、「離婚そのもの」にはショックはないかもしれない。しかしなによりも子どもという「守らなければならない存在」がいる時はどうするだろうか。今回話を聞かせてくれた礼子さんは、産後に仕事をやめて専業主婦になっていた。離婚そのものはいいとしても、彼女が一番に考えたのは「生活」。しかも「長い目で見た生活」だったのだ。
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短気な夫をちょっと恐れて…

礼子さんが1歳年上の元夫と出会ったのは、短大を出て新卒で勤めていた会社から移った転職先。
「最初の印象は、『えらそうで嫌な人だな』。でも、思いがけず交際を申し込まれ、それまで付き合ってきた人たちとは全然違うタイプだったので、私自身の成長のためにはいいのかも、と思って付き合ってみることにしたんです」

まだ22歳、ほんのお試しのつもりだった。それまで付き合ってきた男性は、礼子さんの言うことを何でも聞いてくれるような優しいタイプ。元夫は、正反対の「俺様」タイプ。優しい男性に物足りなさを感じていた時期だったから、新鮮だった。

でも、付き合い始めてすぐに、「やっぱり合わない」と思った。
「すごく短気で。あおり運転するような人、いるじゃないですか。ああいうタイプなんですよ。けんかっぱやくて、キレたら何をされるかわからない。お酒を飲んで暴れたり、ものを投げてきたり」

蓋をあけてみると短気で切れやすく、怖いという思いまで抱くように……Photo by iStock

別れようと思ったが、それこそキレられるのが怖くて、なかなか言い出せない。そのうちに、なんと妊娠してしまった。

「産んで一人で育てようと思ったんです。でも、相手に押し切られて。子どものためにも両親がいたほうがいいには違いないので、籍を入れました」