6年ぶりの新作『半沢直樹 アルルカンと道化師』発売!あのキャラは出てくる…?

舞台は再び大阪西支店へ
村上 貴史 プロフィール

浅野支店長、再び

というわけで、半沢直樹のポジションは大阪西支店の融資課長。『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』とまったく同じポジションです。ちなみにこの支店の支店長は浅野匡。あの、浅野匡です。大阪西支店の物語となれば、欠かすことのできない敵役です。このあたりの配役は、まさに期待通りですね。

イラスト/ジェントルメン中村

21世紀に入って間もない9月のこと。半沢直樹は浅野支店長経由で大阪営業本部から企業買収案件の支援要請を受けました。大阪西支店の取引先である仙波工藝社を買いたいという買い手がいるのだそうです。大阪営業本部の担当者とともに仙波工藝社を半沢は訪問しますが、仙波友之社長は買収に否定的で、話はそのまま立ち消えになるかと思われたのですが……。

というところから物語は始まるのですが、この新作、期待以上です。

もう少しかみくだいていうと、これまでの「半沢直樹」シリーズではあまり表面に出てこなかった魅力でたっぷりと愉しませてくれるという意味で満点。また、「半沢直樹」シリーズへの期待を十分に満たしてくれるという意味でも満点。つまりダブルで満点という“期待以上”なのです。

 

ミステリーとしての一面

まず、前者について紹介しましょう。この『アルルカンと道化師』には、ミステリとしての要素がたっぷり盛り込まれているんですよ。池井戸潤さんは、ミステリの新人賞としてとてもとても有名で歴史のある江戸川乱歩賞を『果つる底なき』で受賞してデビューした作家です。企業小説や経済小説の書き手と思われている方も少なからずいらっしゃるかもしれませんが、根底にあるのはミステリ。本書では、それがよく理解できるのです。

どうミステリかといえば――仙波工藝社の買収案件はその後、立ち消えになるどころか大阪西支店にとっての重要案件として注目されていくことになり、半沢も継続的に関与することになるのですが、その過程で、いくつもの謎が浮かび上がってくるのです。例えば、「何故あの人物はこうした行動を取るのか」であったり、「あの人物のメッセージはなにを意味するのか」であったり。こうした謎を解くことが銀行員としての職務をまっとうすることに繋がるため、半沢直樹は関係者を訪ね歩き、証言を集め、過去を探り、ひとつひとつ答えを掘り起こしていきます。銀行員でありながら、探偵のように。

そしてその半沢の調査は、意外性の連続を読者にもたらしてくれます。謎→調査→真相→驚愕→納得。それの繰り返し。謎そのものの設定もユニークであれば、真相も驚愕も納得もそれに相応しいもので嬉しくなる。そう、まさに良質なミステリですよね。

しかも、掘り起こした先で浮かび上がる物語がまた、素敵です。芸術の魅力や魔力、あるいはそれに囚われた人々の想いなどが綺麗に編み上げられていて、それこそ額に入れて飾っておきたくなるほどの美しさです。

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