「それなら自分で探しに行こうと。オーガニックの環境下で綿や羊毛のための羊を育てている場所を見つけて訪ねることにしました」

アルゼンチンのウール牧場やペルーのアルパカ牧場、モンゴルのカシミア農園など。石川さんは直接連絡を取り、一人で向かった。

艶やかな黒髪のような生糸は、かせ染色によるもの。原糸の風合いを残しながらムラなく均一に色を染めている。実際に触って確認をする石川俊介さん(左)。

「ペルーのアルパカ牧場は標高4000mという高地でしたが、農薬不使用で完全な自然の中で、アルパカたちがのびのびと暮らす素晴らしい環境でした。本来のサステナビリティとはこういうことかと。

一方で、オーガニック認証が取れていないからと安く買い叩くブローカーがいることも知りました。素材が売れなければ、生産者は簡単に貧困に陥ってしまう。僕ができることは誠実なものづくりを行う人たちと正しい価格で取引し、彼らの生活を支えることだと思いました」

「嵐田絹織」の工場にずらりと並ぶ竹製の糸繰機。生糸を糸枠に巻き取るための道具ですべて人の手で作業をする。

信頼できる生産者の素材を直接仕入れ、それを国内の紡績工場や織物工場に託し、糸や生地に仕上げてもらう。石川さんは〈マーカ〉時代から変わらず、国内の繊維産地にも足繁く通う。今回は山形県米沢市にある「嵐田絹織」の見学に同行させてもらった。1930年代から絹地を専門とし、超高密度な生地も織れるという高度な技術を誇る工場だ。

経糸を整える工程も手作業で行う。本数、密度、長さの違いに合わせて糸を巻き取るが、時には経糸が2万本に及ぶことも。その分、巻き取りの回数も増える。

「糸や生地については職人さんたちのほうが詳しいので勉強になります。特にシルクは糸の本数や織り方などでまったく違う仕上がりになり、一緒に開発するのが楽しいですね。また、嵐田さんを通じて、“世界一のシルク”を作るブラジルの『ブラタク』と出会うこともできました。

昨年は現地を訪ね、生糸の生産工程を見せてもらったんです。工場ではカーボンニュートラルを実現したり、繭糸を引き出す稲穂も無農薬で育てたり。環境に配慮したものづくりが行われていました」