SDGsはグローバルな共通目標だけれど、国や地域によって課題は違います。それは経済的、社会的な格差だけでなく、伝統、文化、風土といった暮らしの環境にも影響されるもの。日本にフィットする持続可能な社会とは? 日本人の私たちができることは?

今回のテーマは、環境破壊や人権問題など山積する課題にファッションはどう向き合うべきか。〈テキスト〉デザイナーの石川俊介さんと未来に続く服作りの現場へ向かいます。

服作りの背景を明らかにして、
人と自然の信頼関係を育む。

〈テキスト〉というブランド名には、テキスタイル、テクチャー、服にまつわるコンテクストという意味を込めた。

原材料の作り手から糸の染色、織物、縫製、加工を担う工場に至るまで。〈テキスト〉の大きなタグには一枚の服ができるまでの軌跡が記されている。石川俊介さんが昨年始動した〈テキスト〉は日本のファッション界で一早く、作り手の顔が見えるトレーサビリティやサステナビリティの実現を目指し、服飾業界の課題解決に向けて挑戦を続けている。

「オーガニックコットン シルクタフタ トレンチコート」はシルクとペルー産オーガニックピマコットンを掛け合わせた生地でハリコシのある風合い。

石川さんは〈マーカ〉、〈マーカウェア〉と2つのブランドを手がけてきたデザイナー。担い手が不足している日本の繊維産業を救うべく、約20年にわたって国内の繊維工場と直接やり取りをしながら服を作ってきた。〈テキスト〉では、国内生産に加えて、環境に負荷をかけない素材を使い、服作りの背景を開示する。立ち上げのきっかけは意外なところにあった。

「嵐田絹織」には30年以上活躍する機械も多い。

「2012年頃にチョコレートとコーヒーの店を経営していたことがあるんです。当時はサードウェーブコーヒーやビーントゥーバーが日本に上陸し始めた頃で、信頼できる生産者が手がけたカカオやコーヒー豆を使うこと、それを消費者に伝えるトレーサビリティの考えが浸透し始めていました。

でも、ファッションはどうだろうかと。僕自身、ふだん使ってるオーガニックコットンやウールが本当にサステナブルな環境で作られているのか、わからないことも多かったんです」

織る途中で糸が切れたことを知らせるドロッパー刺しの作業。一本ずつピンをかける作業もすべて手作業。

どうしても自分で確かめたくなり、海外の原材料を購入していた輸入代理店に現地の見学を申し出るも話が進まなかったという。

織機にセットされた生糸。自然由来の美しい光沢に目を奪われる。