英王室を救うポリコレ的存在

そんな王室にとって、メーガン妃は必要な存在だったのではないだろうか。

離婚歴、アフリカ系アメリカ人、庶民出身――過去にヘンリー王子が交際してきた上流階級出身の白人金髪美女たちとは正反対のメーガン妃だが、ヘンリー王子が王室から彼女の交際を反対された、とは本書のどこにも書かれていない。
強いて言えば、二人が交際から1年も経たずに結婚を決めたことをウィリアム王子が心配し、「必要なだけ時間をかけて、“この女の子”(this girl)のことを知るべきだよ」と言ったくらいだ。ちなみに、ヘンリー王子はこの“this girl”の声のトーンに、兄の尊大な態度を感じとり、これをきっかけに兄弟の関係がギグシャクし始めたそうだ(そして、チャールズ皇太子がコロナウィルスに感染したのをきっかけに兄弟の仲は改善したようだ)。

話を戻すと、王室はメーガン妃のことを反対しなかった。それは、現在のイギリスが様々な人種が入り混じり、伝統的な家族の形も変化している、多様性に富んだ社会であることが背景にある。実際、エリザベス女王の4人の子供のうち3人が離婚をしているし、王室はポリティカリーコレクトでいるためにも、メーガン妃との結婚を反対できなかったのだろう。

今年3月、コモンウェルス・デー(イギリス連邦加盟国の記念日)の式典にヘンリー王子と出席し、最後の公務を果たしたメーガン妃(2020年3月9日)〔PHOTO〕Getty Images

本書には記されていないが、筆者が読んで感じたのは、イギリス社会の多様性をアピールする他にも、王室はメーガン妃に対して社会的・経済的な期待も抱いていたのではないだろうか。

まず1つ目は、アフリカ系のルーツに加え、メーガン妃が結婚前にアフリカ支援の活動に関わってきた経歴が、アフリカやアジアなどの非白人圏のイギリス連邦国で支持されるだろうという期待。イギリス連邦国にはかつてのイギリス植民地だった53カ国が加盟しており、メーガン妃とヘンリー王子は結婚後、連邦関連の公務に力を入れることが決まっていた。ジバンシィが作ったメーガン妃のウェディングドレスのヴェールには53の連邦国の花が刺繍されていたぐらいだ。

挙式後の祝福の中でキスをする二人。メーガン妃のベールに刺繍された花の模様に注目(2020年5月19日撮影)〔PHOTO〕Gertty Images