なぜ安倍氏がここまで緊縮財政に積極的だったのかについて、本当のところはよく分からない。基本的な価値観として財政均衡論者だったのかもしれないが、別な理由も考えられる。安倍氏にとっては憲法改正が悲願であり、実は経済や財政の運営にはあまり関心がなかったとの見方もある。安倍氏が明確に意識していない間に、霞ヶ関主導で一連の準備が進められた可能性も否定できない。
安倍政権はこれまでになく高い支持を国民から獲得してきたが、安倍政権の支持者は政策というよりも安倍氏自身を支持するというニュアンスが強い。消費増税や年金減額は、本来なら大きな反発を受け、政権運営すら危うくなりかねない決断だが、熱狂的な支持者の存在によって、ほとんど問題視されることはなかった。
いずれにせよ、安倍政権は財務省を中心とした財政当局の意向をもっとも反映した政権となった。安倍政権を継承する菅政権が、消費増税を明言したということになれば、安倍政権が確立した財政均衡路線はさらに強固になると判断せざるを得ないだろう。
増税が明言されたことで、投資家は国債の増発について、従来ほど大きなリスクとは見なさなくなるだろう。限度はあるが、国債の増発が容易になるのは間違いなく、その分だけ財政出動の余力が増える。
自民党内では、大型の予算措置を求める声が多いとされ、場合によっては業界や地域へのバラ捲きが復活する可能性もある。同じ財政均衡主義でも安倍氏は基本的に緊縮路線だったが、菅氏の場合には、拡大均衡という流れになるかもしれない。