日本三大都市の一つで、食が豊かな愛知県名古屋市と、その名古屋からほど近くにある焼きものの町、岐阜県多治見市。菓子研究家の長田佳子さんが自分のお菓子に合う器を探しに出かけてみたら……。信念を持って文化を発信する人々と出会い日々の暮らしを思索する旅となりました。

まずは名古屋で小腹を満たす。

大地のおやつシリーズの「ツバメサブレ」は、全粒粉の風味が豊かに香り、さくっほろっとした食感がおいしい和風のサブレ。/ツバメヤ 大名古屋ビルヂング店 愛知県名古屋市中村区名駅3-28-12大名古屋ビルヂング地下1階 ☎052-414-4758

身近なようで、なかなか行けない場所ってあるものだ。菓子研究家の長田佳子さんにとって、愛知・岐阜はそんな近くて遠い土地だった。三重出身なので、帰省のときには名古屋を通るし、岐阜も近い。ついでに寄ればいいのだけれど、帰省のためにとった時間はなるべく母と一緒に過ごしたい。いつでも行けると思うからか、結局何年も、通りすぎるだけとなってしまっていたのだそうだ。

そのうちに気になっていた店、友人に勧められた店と情報は少しずつ増えていく。いざ旅をしようと思い立ったら、1泊2日ではとても回りきれないほど、行きたい場所がたくさんあった。

名古屋についてまずは名物の天むすを買いに〈千寿〉へ。本来ならば趣のある本店に行きたいところだけど、時間に制限があるとき、支店があるのがありがたい。地下街にある支店へ行き、レトロな竹皮風の包みを入手する。同様に、岐阜の柳ケ瀬に本店がある〈ツバメヤ〉の支店で、「大地のどらやき」や「ツバメサブレ」などを買い込んだ。

〈洋菓子・喫茶 ボンボン〉ではレトロなケーキや、朝ごはんが楽しめる。/洋菓子・喫茶 ボンボン 愛知県名古屋市東区泉2-1-22 ☎052-931-0442

次に向かうのは〈洋菓子・喫茶ボンボン〉。喫茶店文化も名古屋の名物として知られており、ここは昭和24年創業という老舗。内装は昔のままで、店内に飾られた人形や、「高級フランス菓子」といった文字、赤いソファなどに昭和を色濃く感じる。日頃から、カフェよりも昔懐かしい喫茶店に行くことが多いという長田さんもこちらのファン。

「濃いめの紅茶と一緒に、種類豊富なケーキを1種類ずつ制覇してみたいと思っています」。

「いつ来ても変わらないお店。メニューも雰囲気も、きっと大昔からこんな感じなのでしょうね」

モンブラン、レアチーズケーキ、レモンタルト……、常時30種類は揃っているというケーキは、どれも懐かしい味わい。

ワインプラザ マルマタ 愛知県名古屋市千種区今池1-19-4 ☎052-733-5255

ひと息ついたところで、かねてから行ってみたかったという〈ワインプラザ マルマタ〉へ。一般的に自然派ワインとかヴァンナチュールと呼ばれているワインを、フランスから輸入し、販売しているショップだ。オーナーの奥さまに話を聞いてみた。

「17年くらい前、フランスに住んでいたときにヴァンナチュールを初めて飲んだらびっくりして。おいしいというよりは、これはなんだろう、という感じ。それから気になって、生産者と直接コミュニケーションをとりながら、さまざまなワインを飲んでいるうちに、気付いたらもう、クラシックなワインには戻れなくなっていました」

以来、年に1度は渡仏し、南から北までワイナリーを巡りながら交流。「今年はどんなワインができたのか」「どんな畑でどんな暮らしのなかでワインが作られているのか」ということを肌で感じながら、仕事をしてきたのだそう。自然に寄り添って作られたワインは、酒屋に卸して流通できるほどのまとまった数を確保しづらいため、卸先はほとんどが飲食業とのこと。

常々、〈マルマタ〉がインポートしているワインのラベルから熱い想いを感じていたという長田さん。/ワインプラザ マルマタ 愛知県名古屋市千種区今池1-19-4 ☎052-733-5255

店内には、ここからワインを仕入れている店のカードがたくさん置いてあり、それらは全国の今をときめくレストランばかりだった。長田さんは、ワイン好きの友人への誕生日プレゼントと、自分の作るお菓子に合うものを購入。

「ハーブやスパイスを使った、甘さ控えめのお菓子を作っているんです」と話して勧めていただいたのは、スパークリングロゼ。

「奥さまがフランスで、パンデピスのようなスパイスの効いたお菓子に合わせてよく呑んでいらしたと聞いて決めました」