テレビはいつから「オワコン」になったのか。『こち亀』に見る昭和〜平成のテレビ史

稲田 豊史 プロフィール

2000年頃から、皮肉をもって描かれる存在に

02年41号「ダイナマイツコメンテーター!!の巻」(133巻)では、両津がワイドショーのコメンテーターとして起用されるが、両津の「キレ芸」を期待する局側は、暗黙の了解として非喫煙者の両津の前に“投げる用の灰皿”と“ぶちまける用の水”を置く。ディレクターに「あとの判断はお願いします」と言われた両津は番組の意図を察し、「すべて自己責任というわけか/局は知らんわけね」とつぶやく。テレビならではの演出手法にチクリ言った回である。

 

08年29号「スピンオフの巻」(164巻)はメタ回だ。両津が急病で休みゆえ、派出所の他のメンバーがあの手この手を使って読者の支持率を上げようとする。お色気が効果てきめんだと理解した中川は麗子に入浴させて読者男子(8歳〜14歳)の支持率を上げ、さらにマリアも入浴参加させるばかりか、麗子のバストを強調させる。読者支持率はどんどん上がるが、ここで部長が中川を制止して言った。

「あまりに知性に欠けていないか?/これでは視聴率が楽に取れるからとお笑いと雑学クイズ番組ばかりになったテレビ局と同じだぞ!/もっと志を高く持て!」

このエピソードが描かれた2008年時点のテレビは、もはやメディアの王様でも、娯楽の最先端でもなくなっていた。ネットの勢いが加速度的に増し、YouTubeやニコニコ動画が若者層の間に浸透を進め、テレビにはネットでバズった動画ネタをそのまま紹介するだけの情報バラエティが増えつつあったからだ。新しく刺激的なコンテンツはむしろネットの方にあると若者たちは気づきはじめた。部長のこのセリフは、当時のテレビの凋落ぶりをストレートに指摘したものである。

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