そんな中、NHK BSで放映された「NHK BS1スペシャル 江戸の知恵に学べ〜コロナ時代を生きる術〜」からは、個人的に大きな感銘をうけました。
江戸時代の300年間には、はしかが13回、コレラが3回、大流行したそうです。
日本文学研究者のロバート・キャンベルさんと奈良女子大学の鈴木則子教授が紹介していた『麻疹癚語』(1824年)や『房種戯画』(1862年)という書物には、当時の様子が、絵と文字によって克明に描かれています。
薬屋に人々が長蛇の列をつくる一方、食堂や吉原に足を運ぶ人が絶え、庶民も著名人も、今日と同じように命を落としていた様子が、まざまざと伝わってきます。
線と面、単色の組み合わせで描かれる筆致はマンガ・アニメ的であり、記号的な表現だからこそ伝わってくる情報の豊かさに、ハッとさせられます。
静岡県の造り酒屋で幕末に記された『袖日記』の記述によると、ある村の人々は疫病を「狐憑き」によるものだとし、狐の天敵である狼(お犬様)の札をもらって、疫病の終息を願ったそうです。解決不能な問題を、まるでポケモンのようにキャラクター化して、納得する。疫病を予言する妖怪「アマビエ」を、漫画家やイラストレーターの方々が様々な形で描いたことも、記憶に新しいところです。
当時の娯楽であった歌舞伎や長唄、落語なども、演目に疫病をからめつつ、皮肉とユーモアたっぷりに、風刺を交えて人々を楽しませていました。他者を誹謗中傷したり、引きずり下ろしたりするのではなく、物語を通して、人々の傷ついた心を癒やしていたという事実から、学ぶべきことは多いように思います。
すでに、ライブエンタテイメントや舞台の世界では、オンラインライブや、密を避けた興行を模索する動きが始まっています。アニメは制作に時間がかかりますから、半年後、一年後くらいから、コロナ禍を経た作品が生み出されるのではないでしょうか。