コロナ危機でアニメ業界に起きていること〜そして、ジブリ映画が普遍的な理由

歴史から学ぶべきことはこんなにも多い
石井 朋彦 プロフィール

もうひとつは、コロナ禍においてアニメ現場は対応が早く、様々な創意工夫によって、危機を乗り切っている、という側面です。

アニメはスタッフがカットごとに手分けをし、紙と鉛筆、PCをつかって制作します。

自粛期間中はアニメーターにライトボックス(作画用紙を下から透かす簡易台)を配布し、自宅作業を中心に制作していたスタジオもありました。密を避けつつ、現場を維持し続けたスタジオも多かったようです。進行率が半分以下に落ちたという現場もあれば、8割ほどでもちこたえたという声も聞かれました。元来、アニメ業界はテレワーク(的なる)進行に対応しやすかったのです。

3DCGやデジタル化が進んでいた現場はさらなるテレワーク化が進み、今後も積極的にオンラインを中心とした制作体制にシフトしてゆくというスタジオも増えています。

中国や韓国、東南アジアのスタジオに頼っていた制作工程も影響を受けました。航空便で発送していたカットが1ヵ月以上戻ってこなかったり、取引先がロックダウン中で進行できないという声も聞かれました。他業種と同様、海外に依存しがちだった制作体制の弱点が浮き彫りになった形です。かつては国内中心で制作されていたアニメ(とはいってもかなり前ですが)が、海外のスタジオに頼らなければ制作することができなくなっていた状況は、マスクや医療機器、生活必需品の確保を国外に頼っていたグローバル化の弱点と重なります。

それでも「電送」と呼ばれるデータによる制作シフトは進んでおり(紙と鉛筆の作画でも、スキャンしてデータ転送が可能)、海外のスタジオは在宅で対応を続けていました。海を越えて、各スタジオが一丸となって、この危機を乗り越えているという印象です。

三密を避けられない音響の現場は、アフレコ(声優が映像に声をふきこむ工程)を中心に、大幅な遅延を余儀なくされました。映像制作はなんとか進んだものの、音響作業が行えず、放映を延期した作品も多く見られました。今はスタジオや音響スタッフ、声優の皆さんの地道な対応によって、収録は再開しています。

これまでも、東日本大震災やリーマンショックなど、幾度となく危機はありました。

今回は、それらをしのぐ危機でありながら、個々の現場は、製作委員会や出資元と協議しながら、作品制作と向き合い続けています。

 

一方で、こんな声もあります。

近年、アニメの制作本数は、1クールあたり80本を超え、劇場作品を含めると、年間400タイトル以上にもなります(テレビシリーズは、1タイトルあたり1クール10〜12話)。1日1タイトルを観ても追いつかない。多くのアニメが、ほとんど見られることなく終わっていた。はたして、これほど作る必要があったのか──と。

新型コロナウイルスの猛威によって、グローバル資本主義・大量消費社会を見直さざるを得なくなった今。アニメ業界においても、過酷な制作状況と需要と供給のアンバランスをどう考えてゆくかは、目をそむけることのできない課題と言えそうです。