留美と会う約束をした日は、朝から清々しい晴天だった。少しばかり秋めいて風も心地よい。

――たまの出社って悪くないよな。

気分よく家を出た直彦は、鼻歌まじりに駅へ向かう。しかしメトロのホームに降り、電車を待っている時……不穏なLINEが届いたのだ。

『おはよう〜!』
『今日は何時に帰る?』

差出人は、もちろん百合である。

彼女とは告白された夜にLINE交換をして、毎朝毎晩メッセージを送り合っている。昨夜のやりとりで今日はオフィスに出社すると伝えていたのだが、なぜわざわざ帰宅時間を聞くのだろう。会う約束をしているわけでもないのに。

『18時には終わる予定だけど、仕事のあと同期と飲むんだ』
『帰ったら連絡するよ』

もちろん、これは嘘だ。仕事の後に会う約束をしているのは留美である。居心地の悪さを感じながら百合の反応を待っていると、短い返信が来た。

『わかった。連絡待ってるね』

――ふぅ、助かった。

深く突っ込まれなかったことにホッと胸を撫でおろし、直彦は少しばかりの罪悪感とともにスマホをしまった。

男を震え上がらせた、恐怖のLINE

仕事が一区切りしたところで時計を見ると、まもなく18時になるところだった。

留美とは19時に広尾のカウンターフレンチで待ち合わせている。

――そろそろ支度するか。

まだ時間はあるが余裕をもって到着したい。せっかくの再会に、焦って汗だくで行くような真似はしたくなかった。

念のため場所を再確認しようとスマホを取り出し……直彦は思わず「ええ!?」と叫び声をあげた。

なんと百合から、10件を超えるLINE電話がかかっていたのだ。

「嘘だろ……なんなんだ、一体……」

慌ててチャットを開く。するとものすごい数の着信通知に続き、目を疑うメッセージが残されていた。

『至急連絡ください』
『今、ナオさんの家の前にいます』