推しの引退に有り金を使い果たし、燃え尽きたシズカさん。しかし「じゃあ他のことを頑張ろう」という気力は湧かず、派遣会社から勧められるままに、職場を移る生活が続いた。

「派遣先の閉店や契約切れで次の仕事を探さないといけない時も、条件の希望は何もありませんでした。今思えば、推しが引退して抑うつ的な状態ではあったんでしょうね。

フィギュアを追いかけていた時は、日本でのイベントは全部見に行って、ずっとファンレターを書き続けて、プレゼントを送って、相手に顔を覚えてもらって……とオタク活動で紛らわしていたんですけど、我にかえるとそれって別に感情のベースをプラスにしてくれるわけじゃなくて。

その瞬間『好き好き好き!』の花火を上げてごまかしてるんですけど、年齢とともに、花火の落ちる速度はどんどん速くなっていった。フィギュアスケートというジャンル自体の当時の状況も影響していたかもしれません。同じ曲で滑る選手が増えて、『過去のあの時のあの選手の演技がよかったな』と懐古してしまう自分もいて。

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10年以上見ているなかで自分が『老害』になりつつあったのかもしれません。でも何より、自分の心が閉じていて、余裕がなかったから、堪能できなかったんでしょうね。推しが引退するときには私としても『見届けた』という満足感がありましたが、その後は、嬉しいとか楽しいという感覚自体がよくわからなくなっていました」

私と知り合ったきっかけであるBL小説も、やはりシズカさんにとっては“花火”でしかなかったと言う。

「買って読むと、たしかに面白いし萌えるんですよ。でも、いつも思っていたのは『こんなに面白いものを読んでも、私は別に幸せになれないな』ってこと。

他の人たちがTwitterで盛り上がって萌えを話していても、私はここに乗れないなって気持ちが強くて。熱量がすごい人を見て、羨ましいなって気持ちと、落ち込んじゃう気持ちが半々でしたね。まあ、フィギュアスケート沼にいたときはコミュニティがあったので、そこから離れて、疎外感を抱いていたのもあるかもしれません」