ともに人気原作ながら『半沢直樹』と『SUITS』に約3倍の大差がついた理由

ドラマにおける原作選びの難しさ
木村 隆志 プロフィール

新作ドラマの打率は「1割以下」

最後にふれておきたいのは、現代におけるドラマ、ひいてはコンテンツビジネスの難しさ。

音楽業界では、アイドルファンを除けば、若年層はレコメンドされた曲や動画を選ぶ傾向が強くなり、新譜が売れづらくなってひさしい。新譜が売れなければ当然テレビの音楽番組は盛り上がらず、大型特番以外2桁視聴率を獲得することはほとんどなくなってしまった。

たとえば、Official髭男dismの『Pretender』がリリースされたのは昨年5月15日。初動のオリコンランキングではトップ10入りがやっとの状態だったが、昨年下半期から今年上半期にかけてジワジワと多くの人々に広がり、「最も聴かれ、最も歌われた楽曲」と言われるほどのヒット曲となった。

これと似た現象がドラマにも起きはじめている。今春、コロナ禍で外出自粛になったとき、最も多くの人々に見られ、称賛を集めたのは、2月にNetflixでの配信がはじまった韓国ドラマ『愛の不時着』だった。

同作は既存の韓国ドラマファンだけでなく、多くの人がレコメンドしたことでジワジワと広がり、情報番組で特集が組まれたほか、バラエティでパロディが放送されるなど、新作ドラマにはない現象を見せている。

Netflix『愛の不時着』webページより

一方、今年放送された新作ドラマの中で、視聴率・評判の両面でヒット作と言えるのは、『テセウスの船』『恋はつづくよどこまでも』『半沢直樹』『私の家政夫ナギサさん』(いずれもTBS系)あたりだろうか。

3ヵ月の1クールごとに約20~30作の連ドラが放送される中、ヒットと言えるのはせいぜい1~2作程度。ドラマが1割に満たない超低打率のコンテンツである以上、今後は「新作を作る」という戦略だけでは心もとないだろう。

新作を作り続け、ヒットを生み出すことはもちろん重要だが、それと同等以上に「放送済みのドラマをどうレコメンドしてもらい、未視聴の人々にも見せて稼ぐ環境を作れるか」が重要な時代に入っているのではないか。

もはや新作でヒットを生み出すのは至難の業である反面、不発に終わった作品の中には「単に見られなかっただけで質が高い」ものも少なくないだけに、これまで以上にプロモーションの重要性が増していくだろう。