ともに人気原作ながら『半沢直樹』と『SUITS』に約3倍の大差がついた理由

ドラマにおける原作選びの難しさ
木村 隆志 プロフィール

キャスティングに見える時代とのズレ

次に着目したいのは、連ドラにおけるキャスティングのニーズとズレ。

『半沢直樹』は、前作の放送時39歳で、現在は46歳の堺雅人が主演を務めている。幅広い年代の視聴が求められる連ドラの主演俳優としては旬の年代であり、年上のベテラン俳優に戦いを挑む図式は明快で共感を得やすい。

一方、『SUITS/スーツ』の主演・織田裕二は、前作の放送時50歳で、現在52歳。中高年層からの支持が厚い反面、若年層への訴求はどうしても低くなり、実力はさておき年齢としては連ドラ主演俳優の旬とは言いづらい。ちなみに、アメリカ版の主人公ハーヴィーを演じたガブリエル・マクトは39歳のときにシーズン1を演じていたから、原作とも大きく離れていることがわかるだろう。

さらに相棒の中島裕翔は、前作の放送時25歳で、現在も27歳と若く、織田の約半分程度。また、ジャニーズ事務所のアイドルであることも、質実剛健なキャスティングを好む現在の視聴者感情とかけ離れているため、おのずと懐疑的な目で見られやすくなっている。ちなみに中島は『半沢直樹』の前作に出演していたが、続編の主要キャストは舞台俳優が中心でアイドルはいない。

織田と中島は熱演しており、「彼らに非はない」に等しいのだが、現在の視聴者が連ドラに求めるキャスティングからズレている感があるのだ。たとえば、織田裕二は『半沢直樹』の悪役として堺雅人と対峙したら、香川照之と同等クラスの反響を集められるのではないか。

大和田(香川照之)をはじめ悪役の充実ぶりも目立つ『半沢直樹』/photo by gettyimages
 

さらに言えば、『半沢直樹』の続編・第1部には、堺雅人の相棒に充実一途の31歳・賀来賢人がキャスティングされていた。ネット上に「フジは相変わらずアイドルを起用し、TBSは先に進んでいる」というコメントが見られるように、キャスティングに敏感な昨今の視聴者にとってこの差は大きい。

過去を振り返ると、織田は『東京ラブストーリー』『振り返れば奴がいる』『踊る大捜査線』など1990年代にフジテレビでヒット作を連発していた。また、そのころから現在まで、中島の先輩にあたるジャニーズアイドルたちがフジテレビのドラマ主演を重ねている。

一方、今夏好評を博したTBSの『半沢直樹』『MIU404』『私の家政夫ナギサさん』は、堺雅人、綾野剛と星野源、多部未華子と旬の主演俳優をそろえ、主要キャストでアイドルの出演はなかった。フジテレビは「時代と視聴者ニーズに合わせて変われるか?」というキャスティング面での課題を突きつけられているのではないか。