ともに人気原作ながら『半沢直樹』と『SUITS』に約3倍の大差がついた理由

ドラマにおける原作選びの難しさ
木村 隆志 プロフィール

原作通りの『SUITS』、2冊凝縮の『半沢』

『SUITS/スーツ』はアメリカの大ヒットドラマシリーズの日本版リメイク。以前、後藤博幸プロデューサーが「条件面をクリアするための高いハードルがあった」と語っていたように、実現まで7年間かかるなど、フジテレビにとっては文句なしの力作だ。

また、本家のアメリカ版が2011年から2019年まで9シーズンにわたって放送されたように、日本版も当初から長期シリーズ化を目指した作品だけに、第2シリーズでの不振に頭を抱えているだろう。

フジテレビ『SUITS/スーツ2』公式サイトより

低迷を招いた最大の要因は、幸村チカ(鈴木保奈美)と上杉一志(吉田鋼太郎)による法律事務所の主導権争いばかりが続き、なかなか先に進まない各話のストーリーにある。実際、ネット上には「だらだらとやり過ぎ」「テンポが悪くて見ていられない」などの不満が後を絶たない。

そのストーリーは基本的にアメリカ版を踏襲し、現在はシーズン2の第9話あたりとほぼ同じペース。アメリカ版のシーズン2は全16話であり、以降もシーズン3からシーズン8までが全16話、シーズン9は全10話が放送された。

つまり、ストック数としては、まだ110話以上あるなど相当多いのだが、フジテレビは内容を凝縮させてテンポアップさせるのではなく、アメリカ版とほぼ同じペースを守っている。

一方、『半沢直樹』に目を向けると、2013年版の第1弾も2020年版の続編も、池井戸潤氏の原作小説を2冊ずつ使っている。もう少し具体的に書くと、1クールの放送を第1部と第2部に分けて、1冊ずつ原作小説を贅沢に使っているのだ。

1冊の小説を4~6話にギュッと凝縮しているため、おのずとテンポは速くなり、見逃せない展開が次々に訪れ、それがドラマ版の大きな魅力となっている。

『SUITS/スーツ2』への反響を見れば、すっかりせっかちになった日本人視聴者にアメリカ版のスローペースは合わないことがわかるのではないか。そもそも日本の小説より、海外ドラマのほうが脚色は難しくなり、『SUITS/スーツ』のような大作ならなおのこと。そんな原作選びと扱い方の難しさも、両作の明暗につながっている。

 

フジテレビとしては「長期シリーズ化のために出し惜しみをした」つもりはないのかもしれないが、「出し惜しみどころか、4冊の原作小説で4シーズン作るのではなく、2シーズンに凝縮した」TBSとの差を感じてしまう。

『SUITS/スーツ2』は、もう少し現在の視聴者嗜好を踏まえて「アメリカ版のシーズン2~3を凝縮させたものにする」というくらいの思い切りがほしかったのかもしれない。