上司が何回注意しても、新卒23歳の部下が同じミスを繰り返した理由

大口の取引先を激怒させたことも…
村上 伸治 プロフィール

周囲と本人が協力しても状況がなかなか改善されない場合は薬物療法を導入することもあるが、幸い、彼の場合は薬を使わずに改善へと向かっている。周囲の対応も最初は私がアドバイスしたが、次第に上司や先輩たちが、「佐々木サポート」というグループLINEを作って、翌日のスケジュールや注意点を共有するなど、独自の工夫を始めたらしい。

薬を処方していないこともあって、最近は佐々木さんが受診する回数も減ってきている。

今回の事例はADHDとして典型的なもので、受診後の経過も理想的なパターンだった。実際には、ここまで周囲の協力を得られる事例は少ない。だが成功したパターンを知っておくことで、どのように対応すべきか見えてくる。最悪のパターンは、怒りに任せ解決しようとした結果生じる悪循環である。

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上司が怒鳴りつけて叱ることで解決しようとすると、本人はやる気をなくたり、反発したりする。当然上司や先輩はさらに怒るため、職場の雰囲気も悪くなるだろう。ストレスを抱えた結果、発達障害を抱えた本人と怒り続けた上司が、ともにうつ病を発症した例も知っている。

互いに助け合う社会へ

発達障害というと、その字面からいかにも「障害者」というイメージが浮かびやすいが、軽度なものを抱えた人は巷に溢れている。そしてその大半は、「障害があると診断されるかどうか微妙なグレーゾーンにいる」人たちである。同僚との関係が良好だと、「ちょっとずれているけど、悪い奴じゃない」と思われて、それなりにうまくやっていける。

だが、周囲から理解されない場合、「あんなダメな奴、辞めさせてしまえ!」となってしまう。受診後に状況が好転した結果、「ダメだと思っていた彼が、今や十分戦力です」と言う上司を何人も見てきた。

完璧な人など、どこにもいない。みんな何かしら長所や短所を持っている。お互いの短所をけなし合っても、職場は殺伐とするばかりだ。人には苦手なものがあると認識してお互いにカバーし合い、助け合う職場にしていくほうが幸せではないだろうか。