上司が何回注意しても、新卒23歳の部下が同じミスを繰り返した理由

大口の取引先を激怒させたことも…
村上 伸治 プロフィール

子どもの頃から落ち着かなかった

上司がひと通り話し終えてから佐々木さん本人に尋ねてみると、上司の指摘はほとんどその通りだと話す。日々自分でも何とかしようと思ってはいるものの、気がつくと一日が終わっている、ということだった。

このような傾向がいつ始まったのかが重要だ。そこで彼の幼少期について尋ねてみると、「忘れ物が多くて小学校の先生によく怒られていたのは覚えている」と話した。休み時間はいつも外で遊び、授業が始まってだいぶ経ってから教室に入ったこともあったという。

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中学に入ってからも忘れ物は多く、夏休みの宿題は8月末になってから慌てて始めるタイプ。9月の新学期が始まっても未提出のものが多く、そのままウヤムヤになる宿題も多かった。試験の際は、解答欄がすべて1つずつずれてしまい、0点を取ったこともある。登校途中で面白いものを見つけると、授業があることを忘れて夢中になり、遅刻してしまうことも多々あった。

中高時代の人間関係について尋ねると、友達には恵まれたと話してくれた。世話焼きの友達がいて、忘れ物を指摘してくれたり、忘れてしまった宿題の内容を教えてもらったりしていた。周囲は呆れつつも助けてくれたので、幸い、いじめられることはなかったそうだ。

大学でも、履修届の提出が遅れて幾つかの科目の単位を棒に振ってしまい、留年の危機に陥ったが、温情措置で4年間で卒業できたという。大学でも世話を焼いてくれる友達と行動することで、何とかやってきたらしい。

大人になってわかった発達障害

初回は以上の話を聞くだけで診療時間が終わってしまったので、続きは次回とし、母親との来院をお願いした。親からも話を聞かないと、発達障害の診断は困難なためである。

翌週にやってきた母の佐々木由美さん(仮名・当時51歳)によると、正義さんは幼児期から明るくて活発な子どもだったそうだ。しかし常に動き回る子で、一緒に買い物に行って少しでも手を離すと、よく一人でどこかに行ってしまったと話した。何回も迷子になっていて、車道に飛び出して車にひかれそうになることも度々あった。