世界は広い。お国変われば生活様式や思考も変わる。気になるのが「日本車は各国でどう思われているのか」ということ。地球温暖化やコロナ禍により日本車への印象、以前と変化があるのか!? モータージャーナリスト・小林敦志氏の見識が広い、アジア&アメリカの日本車事情をご案内。
世界的に見ると、プレゼンスの低下傾向が強い日本車。そのなかでASEAN市場は“最後の楽園”と表現してもいいほど日本車の強い市場だ。例えばインドネシア。
GAIKINDO(インドネシア自動車工業会)統計によると、’20年1〜7月のインドネシア国内での新車販売台数における日本車のシェアは95%を超え、限りなく100%に近いものとなっている。
一方のタイ。トヨタモータータイランドの統計によると、’20年7月単月の販売台数ではトヨタをトップに以下いすゞ、ホンダと日本勢がトップ3を占め、この3ブランドの販売シェアだけでも約65%となっている。
このようななかで気になるのが日産の動き。今年3月にインドネシアにおける車両生産から撤退するとの報道が相次いだ。新興国向けブランドとして“ダットサン”を展開したのだが、例えばインドネシア国内でも消費者からの評価が低く、販売低迷状況となっていた。
ASEAN地域では日増しに、日産の存在感が薄くなっていっている。日系ブランドのなかではトヨタの強さが目立ち、インドネシアでは小型MPVの“アヴァンザ”が国民車と呼ばれるほどよく売れているし、タイの首都バンコクでは街中を走るタクシーのほとんどがカローラといった具合だ。
タイで例えれば、日本は憧れの国であり、日本国内のトレンドを敏感にキャッチしており、そのような傾向もあるのかバンコク市内では富裕層を中心にハイブリッド車を好んで乗っていたりする。欧州勢も富裕層向けにPHEVのラインナップを強化している。
ただここのところ、この地域の国民所得がめざましく向上し、水面下では“ドイツ車に憧れている”といった声もよく耳にする。現時点では圧倒的な販売シェアを誇る日本車であるが、韓国系ブランドの追い上げも目立っており、けっして安穏としていられない。