安倍首相はなぜ「岸田」をあきらめ「菅」にしたのか

首相交代・深層レポート【中編】
戸坂 弘毅

公明党・創価学会の苦しい現状

一方の公明党と創価学会はなぜ、そこまで気を使って菅が政権中枢から外れないよう配慮するのか。そこには、日本最大の新興宗教団体が置かれた苦しい現状がある。

公明党は、結党後初めて臨んだ1965年の参院選全国区でいきなり509万票を獲得し、その後、90年代まで参院選の全国区(83年以降は比例区)で6~700万票台の票を得てきた。

それが自民党と連立を組んだ後の2000年代に入ると得票数を大幅に伸ばし、2004年の参院選では862万票、2005年の「小泉郵政解散」の衆院選では比例の得票総数(11ブロックの合計)を898万票まで伸ばした。選挙区で自民党候補を支援する見返りに、自民党の後援会などから比例の公明票を出してもらう選挙協力の成果だった。

 

ところがその後、公明党の得票数は減少していく。2010年代に入ると衆参共に700万票台となり、前回2017年衆院選では、今の選挙制度の下で公明党として選挙を戦い始めた2000年衆院選以降、初めて700万票の大台を割って697万票まで減らした。昨年の参院選はさらに653万票まで減少させている。

その最大の原因は、1950年代から60年代にかけて創価学会の急成長を担った熱心な学会員の高齢化だ。

創価学会の会員数は公称827万世帯で、この数字は2007年から変更されていない。ただ、かつては世間が眉を顰めるほどの激しい選挙運動によって、一人で何票もの学会員以外の票を獲得してきた熱心な信者も70代から80代となり、動きが極端に鈍くなっている。その一方で「学会員二世」が多い若い学会員たちは選挙になってもあまり動かず、学会の集票力はかなり低下しているのだ。

もう一つの原因は、自公連立政権下、とりわけ安倍政権の下で、安全保障関連法など公明党の従来の主張と矛盾する「タカ派」的な政策に次々と賛成してきたため、「平和と福祉の党」という看板が色あせ、古くからの学会員が公明党離れを起こしていることだ。