安倍首相はなぜ「岸田」をあきらめ「菅」にしたのか

首相交代・深層レポート【中編】
戸坂 弘毅

「河野を担げば簡単に勝てる」

菅の意向を汲んだと思われる公明党幹部の発言は、これだけではない。例えば、8月5日付の読売新聞に掲載された幹事長の斉藤鉄夫のインタビューだ。

この中で斉藤は「ポスト安倍」について、「誰が望ましいと言うつもりはないが、党員を含めた総裁選を経て、透明感を持って選ばれた自民党総裁と連立政権を組んでいくのが、友党としての望みだ」「(国会議員だけでの選出は)決して自民党にとっても連立政権にとってもよいことではない」と述べている。

公明党幹部が他党の党首選びの方法に注文を付けるのは異例で、永田町ウオッチャーの間で話題を呼んだ。この発言も菅の意向に沿った発言と考えれば合点がいく。

 

菅は、以前から親しい永田町関係者に対し、自らの立候補を否定するとともに「岸田さんには発信力が全くない。私が河野太郎を担げば簡単に勝てる」と漏らしてきた。

結果的には、安倍の途中辞任に伴い、菅自身が総裁選に立候補することになったが、菅は河野を担いで総裁選を戦うことも有力な選択肢としてきたのだ。同時に、岸田になるくらいなら石破を担ぐことも検討する考えも周辺に漏らしてきた。

派閥の論理が幅を利かせる国会議員票では岸田が有利でも、フルスペックの総裁選によって党員投票を実施すれば、岸田よりも国民の支持がはるかに高い石破や河野が有利だと考えていたのだ。つまり、この斉藤の発言も菅の意向に沿って行われたと考えれば辻褄が合う。