安倍首相はなぜ「岸田」をあきらめ「菅」にしたのか

首相交代・深層レポート【中編】

週明けの自民党総裁選で、菅義偉官房長官が「ポスト安倍」の座を射止める公算が大きくなっている。コロナ前から安倍首相が描いてきた「岸田後継」の青写真は、いかにして頓挫したのか。公明党も絡み水面下で展開されてきた暗闘を、全て明らかにしよう。

「岸田潰し」の策を弄した菅

自民党総裁3期目に入ってから、首相の安倍晋三は、「2020年夏に東京五輪を終えた後、秋にも途中辞任し、党員投票を省略した形の総裁選に持ち込み、気心の知れた政調会長の岸田文雄を後継にする」との構想を有力な選択肢としてきた。

一方、官房長官の菅義偉は、盟友関係にある安倍と副総理・麻生太郎の主導で岸田政権が誕生すれば、政権中枢に自分の居場所はなくなると考え、これを阻止したいと考えてきた。

そのため、菅はこの数年、岸田政権阻止のために様々な策を弄してきた。昨年の参院選で、岸田の地元の広島選挙区に自らの側近である河井克行の妻・杏里を強引に立候補させ、岸田派長老の溝手顕正を追い落としたのは「岸田潰し」の典型だった。

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岸田が新型コロナ感染拡大に伴う経済対策などで力量不足を露呈し、風前の灯火となった「岸田政権」の構想だが、安倍が解散して勝利すれば岸田も復活する可能性があった。それゆえ、菅は安倍の手による解散を阻止したいと考えていたのだ。

7月8日、東京・信濃町の創価学会本部別館で開かれた、全国の学会幹部が集う「最高協議会」。ここで、学会の選挙対策を担う副会長・佐藤浩は、安倍が衆院解散に踏み切る時期について「来年10月の総裁任期満了近くになる可能性が最も高い」との見立てを披露したが、これには菅の考えが反映されていたとみられる。

創価学会が、準備が整っていない今年初秋の解散に反対だったのは確かな事実だ。だが、一連の経緯を振り返れば、菅はそうした学会の意向を意図的に拡大解釈し、自ら年内の解散を否定する発言を繰り返すとともに、佐藤を通じて公明党にもそれを後押しする発言を頼み、公明党も菅の意向に沿った発信を行った――という構図が透けて見える。

同時に、これを裏から見ると、本来は学会としては避けたい都議選から3か月後の衆院選をあえて容認することによって、菅が次期政権でも中枢に座ることが可能になるのであれば、その方が学会にとって有益だ――と判断していたことを意味していた。