アベノミクスはなぜ成功しなかったのか? その「シンプルな理由」

根本的な「見誤り」があった
加谷 珪一 プロフィール

世の中では、金融政策や財政出動などマクロ政策を強化すれば、それだけで経済が良くなると考える人が増えているが、それは経済活動の現場を知らない、ある種の空論といってよい。時代にあった適切な産業基盤があってこそ、マクロ政策が効果を発揮するのであって、マクロ政策が日本経済の骨格を定めるわけではないのだ。

アベノミクスがうまく機能しなかったのは、成長戦略に誤りがあり、しかも、その誤りは日本経済に対する認識そのものにあると筆者は考えている。具体的に言うと、日本はすでに日本人自身の消費で経済を回す消費主導型経済にシフトしているにもかかわらず、輸出で経済を成長させるという従来の価値観に基づいて政策を立案してしまったことである。

アベノミクス期間中にその弊害が顕著になったというだけで、この話はバブル以降、すべての政権に当てはまる課題といってよい。輸出が増えれば(あるいは外国人がカネを落とせば)、日本経済が潤うという考え方から脱却できない限り、持続的な成長を実現するのは難しく、その価値観からの転換こそが今、求められている。

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日本はもはや輸出主導型経済ではない

では、具体的に輸出主導型経済と消費主導型経済はどう違うのだろうか。

戦後日本における経済成長は、基本的に外国の富が起点になっている。太平洋戦争後、安価な製品を大量生産できる国は日本しかなく、日本企業には大量の注文が舞い込んだ。GDPの定義上、輸出が増えるとその分だけ数字はプラスにカウントされるが、輸出が直接的にGDPに与える影響は実は小さい。

輸出によってGDPが大幅に増えるのは、メーカーが海外からの需要に応えるため、工場を新設するなど設備投資を強化するからである。国内で設備投資が行われると、サービス業を含めて、あらゆる業界にお金が落ちるので、労働者の所得が増える。所得が増えた労働者は消費を増やすので、これが最終的に経済の屋台骨である個人消費を拡大させるのだ。