〔PHOTO〕Gettyimages

大坂なおみ選手の「棄権」とは何だったのか、日本で報じられない「抗議の背景」

BLM運動、そして歴史との関わり

あれは「棄権」だったのか?

8月27日、全米オープンテニス前哨戦にあたるウェスタン・アンド・サザン・オープンに出場中だった大坂なおみ選手が、自身のツイッターとインスタグラムで準決勝戦の「棄権」を表明したことが国内外で報道された。その後、大会主催者側が27日の準決勝を中止し28日に再開すると発表したことを受け、大坂は戦列に復帰した(しかし、勝ち上がった決勝戦は怪我のため棄権した)。

この報道には事実誤認があるようだ。大坂は準決勝後の記者会見で、一連の出来事について聞かれ、次のように説明している。すなわち、準々決勝(26日)の後にNBA(男子プロバスケットボール)の抗議行動を見て、自分も声を上げなければならないと感じたこと。エージェントと電話で話し合った後、WTA(女子テニス協会)に電話したこと。協会が彼女を支持し、試合を1日延期することを伝えてくれたため、声明を発表した(27日)こと。

つまり、大坂選手の声明は、大会運営側との慎重な協議を経て発表されたものである。対戦相手のエリーズ・メルテンスも、大坂の行動を全面的に支持していた。

大坂は記者会見で、「私は棄権すると言ったのではありません。翌日はプレーしないことになっていると言っただけです」と述べており、上の時系列を踏まえると、彼女の声明の真意がよく分かる。

大坂なおみ選手(9月2日)〔PHOTO〕Gettyimages
 

大坂選手の行動のきっかけとなったのは、ウィスコンシン州で8月23日に起こった新たな警察暴力事件である。車に乗り込もうとした黒人男性のジェイコブ・ブレイクさんが、白人警官に背後から至近距離で7発銃撃された動画がSNSに拡散すると、5月下旬以来継続していたBlack Lives Matter(以下BLM)抗議デモが再び各地で行われ、地元のミルウォーキー・バックスをはじめとするNBAの6チームや、WNBA(女子プロバスケットボール)、MLS(プロサッカー)、MLB(プロ野球)などに所属する複数のチームが、予定されていた試合を「ボイコット」した。