ビジネス化する「新型出生前検査」、無認定施設が急増している深刻な事情

市場原理と医の倫理を考える
柘植 あづみ プロフィール

医療の市場原理と倫理

ではなぜ、日本産科婦人科学会の指針を守らず、日本医学会の認定をうけずにこの検査を実施する医療機関が現われるのか。

第1に、産科婦人科学会の指針の条件が厳しいために、医学会の認定基準を満たすのが難しいという理由がある。

たとえば、産婦人科医と小児科医がいて、そのいずれかが臨床遺伝の専門医であるという条件を満たすのは、規模がかなり大きな病院に限られる。

また、臨床遺伝専門医か認定遺伝カウンセラーなどの資格を有する人が遺伝カウンセリングを提供する体制をとれるところも多くない。

第2に、学会の指針は法律ではなく、破っても何の罰則もない。新型出生前検査に関する指針は、日本産科婦人科学会が策定したが、日本医師会、日本医学会、日本産科婦人科医会、そして日本人類遺伝学会、の5団体が議論に加わり、関係者はこの指針を遵守するようにという内容の共同声明を出した。

しかし、日本産科婦人科学会と関係ない診療科では、学会指針を破っても学会から除籍されるようなペナルティもないのである。たとえ学会から除籍されたとしても医師免許が剥奪されるようなことはない。

 

第3に、それが経済的な利益に結び付くためである。それには条件が揃う必要がある。

一つめは、この検査が妊婦からの採血だけで済み、あとは検査会社に委託できることだ。

二つめは、この検査が新しく、自由診療のために、検査費用が高いことである。検査費用として女性から支払われるのは、20万円前後といわれている。そのために、採血をした医療機関が得る利益が比較的高いし、仲介業者の利益も大きい。2020年7月23日の朝日新聞デジタルの記事は、仲介業者が「1採血あたり3万円」と医療機関を勧誘していることを報じた。

そして三つめ。指針では、専門家による遺伝カウンセリングの提供が定められているが、遺伝カウンセリングを提供しなければ、その人材を揃える必要がない。

これまでのデータからは検査結果で何らかの病気や障碍が見つかるのは1~2パーセントである。98パーセント以上の人には、胎児の病気や障碍はありませんでしたという結果を伝えれば済む。

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