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変革を起こしている金融機関の共通点は何か

「ザ・銀行員」はもういらない
過去20年でリスクをとる銀行、銀行員は消え、それが日本経済に影を落としている。組織が時代の変化に対応できず、創造性を発揮できない元凶はどこにあるのか?
一方で、変革を起こしている金融機関もある。彼らは、次世代の銀行像、あるいは銀行の枠をはみ出した未来像を描いて日々挑戦を続けている。変革を起こしている金融機関の共通点は何か?
橋本卓典氏による「捨てられる銀行シリーズ」待望の第4弾『捨てられる銀行4 消えた銀行員 地域金融変革運動体』(9月16日発売)から、その一部を紹介する。
 

組織の不祥事はなぜ起こるか

企業組織、行政機関などの不祥事は、どうして生じてしまうのだろうか。

日産自動車は、カルロス・ゴーン元最高経営責任者(CEO)が会社法違反(特別背任)などの罪で起訴され、その後、検察の目を欺いての海外逃亡劇という強硬手段に打って出た。後継の西川広人も不当報酬問題で引責辞任した。経営は混乱し、コロナ前から深刻な業績悪化で収益は低下した。

ゴーン元CEO(photo by gettyimages)

内田誠社長兼最高経営責任者CEOは就任後の記者会見で、「議論を尽くして事業運営に当たる。社内外の声に耳を傾け、反論が許される会社風土をつくっていく」

と、再起を誓った。

日本郵政はかんぽ生命保険、日本郵便の不正販売問題で、長門正貢社長らグループ3社

長が引責辞任に追い込まれた。長門は2019年12月の辞任会見で、

「経営者として欠陥があったとすれば、足元を見ていなかったことです。築城三年落城三日と申しますが」

と、経営能力の欠如とは対照的に、実にセンスある名言を残した。

さらに、総務省事務方トップの鈴木茂樹事務次官は、かんぽ生命保険問題を巡る行政処分についての検討状況などを「旧郵政省の先輩に当たる日本郵政の鈴木康雄上級副社長に伝え、辞任に追い込まれた。

いずれの組織も見識ある人物をそろえて社外取締役を置いたり、内部監査だったり、株主総会だったり、様々な牽制機能を堅牢に整えている巨大組織にもかかわらず、どうして経営の崩壊を招いてしまうのだろうか。

それは組織のトップたちが認めている通りだ。「反論が許されない会社風土」、「足元」、「先輩」などという「数値では計測できない何か」が物事を決定的に左右しているからだ。

簡単に計測できるもの、目で見えるものの大半は、選択の正当性をもっともらしく見せるための後付けの根拠に過ぎず、容易に数値化されないものにこそ最大限の警戒を払わなければならない。

創作は、問題意識の変遷そのものだ。2016年の『捨てられる銀行』(講談社現代新書)で深まった疑問は「なぜ地域の優れた人材を集めたはずの地域金融機関が、地域や事業者を見ず、付加価値のない低金利貸出の営業を競い合い、肝心の目利き力を失い、『バカ』になってしまうのか」というものであった。

低金利という構造的問題だけでは説明がつかない。一部に革新を起こす金融機関もあるからだ。この問いを突き詰め、これまで重視されてこなかった「社内政治を優先してしまう組織文化」に起因していると確信した。

19年『捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む』(同現代新書)を世に出したのは、こういう経緯だ。