脳科学・AI研究者である黒川伊保子さんの『妻のトリセツ』は、妻と夫の思考や行動の違いをユーモラスかつ的確に解説し45万部を超えるベストセラーとなった。黒川さんの最新刊『女と男はすれ違う!共感重視の「女性脳」×評価したがる「男性脳」』では、大人の女性が人生をしなやかに切り開く方法を、脳科学の立場からわかりやすく説いている。「男女は、同じ機能を搭載した脳で生まれてくる」が、「『とっさに使う回路』の初期設定が違う」と黒川さんは語る。そう思うだけでも、相手を責めずに自分の中で納得できるようなヒントがあるのだ。今回は本書の中から抜粋し、「女心がわからない男にイライラしない方法」について紹介しよう。

男女の脳は違うのか

男と女の脳は違う。
男と女の脳は違わない。
ーー実は、どちらも正しい。

男女は、同じ機能を搭載した脳で生まれてくる。ともに完全体である。
ただし、「とっさに使う回路」の初期設定が違うのである。哺乳類の雌雄は、生殖の戦略がまったく違う。このため、オスはオスとして、メスはメスとして子孫を残しやすいように、あらかじめ、「とっさの脳の使い方」の初期設定がなされている。

男と女の脳は違う。
その違いをロマンティックに表現すれば、「女性脳は、最初から答えを知っている賢者」であり、「男性脳は、永遠に答えを探し続ける冒険者」なのである。
まずは、その違いからひも解いていこう。

男性脳という脳がある、女性脳という脳がある、という話ではない。性別でひとくくりにすることも難しい。ただ、その多い傾向を知るだけでも別の視点を知ることができるはずだ Photo by iStock

男には、目の前のものが見えない

女性脳は、右脳と左脳の連係がとてもいい。一方、男性脳は、右脳と左脳の連係が緩慢である。これが、脳の性差の根源だ。

右脳は感じる領域、左脳は顕在意識を担当している。女性脳は、生まれつき右左脳連係が非常によく、感覚器がつかまえた情報を密度濃く顕在意識に持ち込むので、「周囲の状況」の把握力が高い。さらに、自分の体調や気持ちの変化も、時々刻々顕在意識にあがってくるので、「自分」のこともしっかり把握できている。

じゃ、なにかい? 男性脳は、女なら見えていて当然の「周囲の状況」を見逃したり、「自分の気持ち」もわからないわけ?……と、つっこみをいれたくなったでしょ。そうそう、そのとおりなのだ。

右左脳の連係が緩慢だと、奥行き認識(ものの距離感の把握)が得意なので、「遠く」や「全体」や「機構」がよく見えるようになる。代わりに、目の前のものの観察力がとんと低い。「自分の気持ち」ですらよくわからない脳なのである。「自分」のことにはあまり意識が行かず、「世界」を意識するのが、男性脳の傾向にして役割だ。

目の前のものが見えないから、一番近くにいてくれる女性のこともよく見ていない。髪形を変えても気がつかないし、悲しそうな顔をしてても素通りするし、共感もしてくれない。「美味しい」「嬉しい」も積極的には言ってくれず、ねぎらいのことばも間が抜けている。
けれど、地の果てまで行って、数々の危機を乗り越えて獲物をとって、無事に帰ってくる。これが、男性脳の正体だ。