アベノミクスの「真実」…次の政権に「円安」を期待しないほうがいいワケ

ここまで起きていたことを検証すると…
唐鎌 大輔 プロフィール

貿易に起きていた「変化」

要するに、第二次安倍政権発足は「海外の経済・金融情勢の好転」とタイミングが揃っており、それが円高相場の反転させる大前提として存在したという話である。

予測が不可能と言われる為替相場だが、米国の通貨・金融政策の影響が絶対的なものであることに議論の余地はない。米国が金融危機の深手を癒し、正常化プロセスに着手したことが円安の潮流を形成したという理解は外せない。

その上で、国内目線に立てば、円相場を取り巻く需給環境にも大きな違いがあったことを知っておきたい。

日本の貿易収支
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リーマンショック後も日本の貿易収支は相応に大きな黒字を出していた。上図に示すように、第二次安倍政権以前の日本経済は基本的に貿易黒字が当たり前だった。しかし、東日本大震災が発生した2011年から貿易赤字基調が根付くようになったのである。第二次安倍政権が発足する1年前から貿易赤字の環境が用意されていたことになる。

これに対し、金融危機直後の日本は潤沢な貿易黒字を抱えていた。金額で比較するとその違いは顕著である。第二次安倍政権発足後の5年間(2012~16年)合計では約▲30兆円の赤字を記録していたのに対し、発足直前の5年間(2007~11年)合計では約+19.6兆円の黒字だった。参考までにリーマンショック以前の5年間(2004~08年)合計では約+41.4兆円の黒字である。

貿易黒字は本邦輸出企業による円の買い切り(ドルの売り切り)を招くフローであり、相場の方向感に大きな影響を与えるものだ。2012年12月という第二次安倍政権発足のタイミングは本邦の対外経済部門の状況がまさに「円安に振れやすい構造」へ変質しようとしている境目だったと言える。