新しい韓国ドラマを感じさせる『パンヌナ』

そして、今回の本題は、ここから。

今回コメントをくれた友人が2年前に「今人気の超リアリティドラマがあるの、絶対見て!」と勧められたのが、『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』(2018年)という作品。こちらもケーブルテレビのJTBCが制作している。妙に長いタイトルだが、ヒモ男と女性のラブコメディではない。『密会』など、リアルかつ映像美の美しさに定評があるアン・パンソク監督・演出で、2018年にもっとも韓国で話題になった30代男女の等身大ラブストーリーだ。

『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』は、韓国語で、「밥 잘 사주는 예쁜 누나(パプ チャル サジュヌン イェップン ヌナ)」。短縮し『パンヌナ』とも呼ばれている。

2018年にリアル恋愛疑似体験ドラマとして韓国で話題に。(C)Jcontentree corp. all rights reserved

当時韓国では、「死んでいた恋愛細胞を覚醒させる作品」とまで言われ、多くの人たちがこのドラマに魅了された。ロングテイクにこだわった映像は、映画的でもあり、何とも言えない空気感がある。また、音楽にもこだわりを持つアン監督は、60年代の名曲、タミー・ワイネットの“Stand By Your Man”や、日系アメリカ人のシンガーソングライター レイチェル・ヤマガタの曲をふんだんに使用し、独自の世界観を作っている(曲を聴くだけでシーンを思い出すほど、本当に音楽も素晴らしい)。

主演は、『愛の不時着』でセリを演じたソン・イェジン。不時着では、超わがままなのに孤独で、恋には一途な財閥のお嬢様を演じているが、この作品では、中流家庭に育ったごくごく一般的な女性として登場する。見た目も性格も悪くないのに、仕事も恋もうまくいかない。そんな消化不良な毎日を過ごす35歳の女性(ユン・ジナ)になり切っているのだ。

フランチャイズコーヒー会社の加盟店運営部 代理として勤務するジナ。キャリアを重ね仕事もできるが、一見イマドキ風の職場は、実はガラパゴス。「給仕や接待は女性社員の仕事」と未だに思っている上司も多く、セクハラ、パワハラが頻発している。過重労働と理不尽が日常化する職場に、女性社員たちの空気はピリピリしている。しかし、ジナは敵を作らないように面倒な上司にも曖昧な態度で接するため、「あなたみたいのがいるから上司たちはつけあがる」「八方美人」と同僚の女性たちから批判も受ける。

パワハラ、セクハラが当たり前の職場問題も裏テーマに。(C)Jcontentree corp. all rights reserved

また、弁護士の彼はモラハラ男で、若い女性との浮気も発覚し、破局。事情を知らない親からは「家柄のいい弁護士と早く結婚を」と煽り立てられる。20代の頃はあんなにも輝いていたのに、今こんなにもうまく行かないのか、なぜ自分は大切にされないのか……。そんな自己肯定感がダダ下がりの女性として登場するのだ。