コロナ、テロ、麻薬、南シナ海…比ドゥテルテ政権の「四面楚歌」

現在75歳。任期満了まで残り約2年

命がけの政権運営

フィリピンのドゥテルテ大統領が、コロナウイルスの感染拡大阻止に有効な手段を講じることができずにもがいている。

感染者数では8月6日、それまで最多を記録していたインドネシアを抜いて東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10ヵ国で最も多くなり、その数字を毎日更新し続けている。マニラ首都圏での防疫体制強化、3密のルール違反者への厳罰など、あの手この手の諸策を講じているがその効果は目に見える形となっていない。

そうしたコロナ禍の最中、8月24日には南部スールー州で自爆テロ犯による連続爆弾テロが発生し、軍兵士や警察官、一般市民が巻添えとなり16人が死亡する事件も起きた。同地域を活動拠点とするイスラム教テロ組織の犯行が濃厚とみられ、陸軍は同地域への戒厳令布告を訴え、ドゥテルテ大統領も検討を始めたと伝えられている。

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さらにドゥテルテ大統領が2016年の就任以来最重要課題の一つと位置づけている麻薬関連犯罪捜査では、捜査現場での令状に基づかない、いわゆる「超法規的殺人」という強硬策が、国民の支持を得ながらも国際社会や国内人権団体からは人権侵害だとして厳しい追及を受けている。

そんな中、刑務所に服役中の麻薬組織の大物、幹部らが相次いで死亡したとする報道があり、疑惑の目が向けられている。というのも、その死因が全て「コロナ感染」だったと当局が記した記録の存在が明らかになったためである。さらに麻薬犯罪服役囚とされる遺体が別人の遺体とすり替わる“身代わり”が行われた可能性も指摘されている。

外交面では対中姿勢が時に強硬に、時に柔軟にと、その時の風向きを読みながらのドゥテルテ流に、中国も米国も苛立ちを隠せずにいる。南シナ海で行われていた中国軍の大規模軍事演習に対抗する米軍主体の対抗策にもフィリピンは消極的な姿勢に終始している。そうした姿勢の裏には、コロナ対策で中国製ワクチンへの期待が隠されているとの報道もある。

 

このように2022年まで約2年の任期が残るドゥテルテ政権には、現在、厳しく難しい課題が山積しており、まさに四面楚歌の状況に追い込まれているといえる正念場が続いている。そんな中、ドゥテルテ大統領は8月25日、「医師からガンのステージ1に近づいていると警告を受けた」と自らの健康問題にも言及して波紋を投げかけている。

強い指導者として現在も約80%という高い支持率を維持しているドゥテルテ大統領だが、75歳という年齢に加えて難しい持病も抱えている。日本の安倍晋三首相が8月28日に健康を理由に辞意を表明したように、政治生命は健康との折り合いが肝要で、その意味でもドゥテルテ大統領は今まさに、剣が峰に立っているといえるだろう。