旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、“旅する八百屋”の高橋一也さんに選書してもらいました。

野菜に会いに旅をする。

都道府県別地方野菜大全
タキイ種苗株式会社出版部 編、芦澤正和 監修 農山漁村文化協会(2002)

地方野菜、地方品種を、都道府県別に紹介する“野菜の事典”。品種や栽培法だけでなく食べ方などもオールカラーで紹介する。

日本には1200種類以上の野菜が存在する。これは日本が世界に誇れることだ。『地方野菜大全』のページを捲りながら「いつかこの野菜に会いたい」と想いを馳せる。

村々で宝物のように栽培され、その種は家族代々に受け継がれる。実りへの祈りは地域の祭りや祝い事となり、食文化を育て、時に自然に捧げる“うた”となる。その地域の土や風、水によって、のびやかな姿形、味に成長する野菜たち。ひとつとして同じ野菜は存在しない。

ハイデガー『存在と時間』入門
轟孝夫 著 講談社現代新書(2017)

哲学者、マルティン・ハイデガーの代表作を、できる限り日常の日本語に置き換えて解説。ハイデガー研究の第一人者による入門書。

『ハイデガー「存在と時間」入門』を、「存在」という言葉を「野菜」に置き換えて読んでみた。すると、「食べる」という行為は、野菜の成長に必要な光、風、土、微生物、人の手など、そこに在った「時間」を丸ごといただいているのだと分かり、ハッとした。

当たり前のことだが、単純なことではない。そうか、当たり前=単純ではないのか。そう気づいた瞬間、今まで止まって見えていた“点”が、ぐるぐると僕の周りを動き出した。

生命誌とは何か
中村桂子 著 講談社学術文庫(2014)

博物学、進化論、DNA発見、ゲノム、クローン……。“私とはなにか、私たちはどこからきてどこへ行くのか”に答える生命の歴史物語。

そんなことを考えつつ、僕は野菜に会いに旅にでる。市場、道の駅、スーパーマーケット。土地に適応しながら何億年と続く“いのち”が、僕の目の前に並んでいる。1200種類以上ある日本の野菜と、僕らと、伝えきれないほどたくさんのキラキラとした生命体が、この地球上に生きている。

『生命誌とは何か』を読むと、身勝手かもしれないが、生命体はすべて僕の尊い仲間であり、僕らは今、仲間と一緒に旅していると思える。

PROFILE

高橋一也 Kazuya Takahashi
古来種野菜の魅力を伝える八百屋〈warmer warmer〉代表。全国の農家から仕入れた古来種野菜をオンラインでも販売する。

●情報は、2020年4月現在のものです。
※本記事内の価格は、すべて税込み価格です。
Photo:Toru Oshima Edit:Yuka Uchida