自己決定を繰り返すことが大切

東京都千代田区立麹町中学校前校長で『学校の「当たり前」をやめた。― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ―』など多数の著書がある工藤勇一さんが、いじめに関する朝日新聞のインタビュー(2020年7月20日)で世の親たちにこんなアドバイスをしている。

“親から何かを与える代わりに、子どもが自己決定できる機会を作ってみてください。小さな自己決定を繰り返させていくことが大切です。その時に使えるのが「どうした?」「どうしたいの?」「私は何を支援したらいい?」という3つの言葉です。

麹町中では、授業を抜け出す生徒を追いかけて注意するのではなく、この3つの言葉をかけます。もし生徒が「勉強したくない」と言うならばそれを認め、「授業に戻るか、別室を用意できるけどどうする?」と、支援の提案をします。

生徒が別室で過ごすことを決めて、そこで好きなことをやっていても構いません。これを繰り返しているうちに、授業に出られなくても別室で勉強をするようになったりするんですよ。“

ビジャレアルの、問いかけ、フィードバックする指導によく似ているではないか。だが、工藤さんらの教育と、日本のシステムは逆行しているように映る。

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主体性のある人間とは

この連載でブラック校則に触れた回で、都立高校の私服校が減っているという話を書いた。

都教委が制服調査をした後の文教委員会に出席した都議会議員だった女性は、私の取材にこう嘆いた。
制服を押しつけられても、自分が型にはめられていることに気づかず疑問に感じない。若者が思考停止になっているのではないか。彼ら自身が何かを選ぶという行動をを放棄している。もしくは、そうなるように育てられている

その女性が高校生の頃、都立高校はもともとは制服だった。それが1970年代、自由主義の流れで生徒たちの手によって制服廃止が広がった。だが今、都内で選択制の学区で公立小学校に制服化の傾向があるように、都立高校も単に「選ばれるため」に制服を導入する風潮があるのではないかと、女性は憂いていた。

女性たちは制服が嫌で仕方なかった。だから自由を求めた。でも、今の子どもたちは自由を選んで飛び立つ翼をもがれているのかもしれない。翼がないから、最初から自由を求めない。

文部科学省は「自分で考えられる主体性のある人材の育成を」と強調している。しかし、現実の教育はそれに逆行している。

「選ぶ」は大きな力になる。
このことを私たち大人が認識すれば、子どもたちの心の飢餓をなくせるはずだ。

子どもたちが自分で手を伸ばし、それをつかみ取る。それには、自分で考え、決断する必要がある。大人たちはその環境を作り、権利を守ることが大切だ Photo by iStock