「選択の余地」がもたらす大きな力

この「選ぶ」という行動は、人に大きな力をもたらすことがわかっている。
コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授による『選択の科学』(シーナ・アイエンガー著/文春文庫)には、20年以上にわたる実験と研究によって解き明かされたエビデンスが綴られている。
厳格なシーク教徒の両親に育てられ、さらに高校のとき網膜の病気で視力を失った彼女は、選択の余地がなかった自分の運命から「選択」を研究テーマに選んだそうだ。

この本を読むと、本の表紙に書かれた「選ぶことこそ力につながる」のコピーもうなずける。

例えば、満ち足りた環境にいるはずの動物園の動物は、野生の動物たちよりはるかに平均寿命が短いのは、餌や行動など自分で選択することができないからだという。
加えて、企業の社長や幹部といった重い責任を伴う人たちの平均寿命は、生涯を従業員として終えた人たちよりも長いことがわかっている。ハードな毎日を送っているはずなのに長生きなのは、ある程度指示通りに動く従業員と違って「裁量権や選択権があるからだ」とアイエンガー教授は説く。

-AD-

また、生後4ヵ月の乳児たちに、ひもを引っ張ると音楽が聴こえることを教えたら、とても喜び落ち着いた。ところが、「音楽のひも」を奪った状態で、ランダムな間隔で音楽が聴こえるように設定すると、乳児たちは悲しげな顔をし腹を立てたという。
教授はこう書く。

「子どもたちは、ただ音楽を聴きたかったわけではなかった。音楽を聴くかどうかを、自ら選ぶ力を渇望したのだ」

乳児でも、「自分で選ぶ力」を求めている Photo by iStock