〔PHOTO〕Gettyimages

中国王毅外相の「不機嫌な訪独」をドイツメディアはどう報じたか

第2テレビは異例の中国・メルケル批判

ドイツメディアで、何かが変わった

9月1日、夜7時のニュース(ZDF・国営第2テレビ)の真ん中あたりで、中国の王毅外相のドイツ訪問のニュースが流れた。ドイツのマース外相との共同記者会見の様子が主だったが、二人の態度が凍りつくように冷たい。ニコリともせず、ほとんど目も合わせない。ひょっとして演技かと思うほどの異常さだった。

マース外相は、伝統的に中国寄りのSPD(社民党)の政治家にしては珍しく、最近、かなり中国の人権侵害に言及していた。香港との犯罪人引き渡し条約もいち早く停止している(日本は香港と犯罪人引き渡し条約を結んでいない)。

ただ、この記者会見を見る限り、民主主義の価値を守りつつ、中国のメンツも潰さないというマース外相の試みは、ほとんど暗礁に乗り上げていた。「ヨーロッパが中国との良い関係を望んでいるということをお伝えすることは私にとって非常に大切」、「地球温暖化防止は、中国の協力なしには行えない」など涙ぐましい。

それでも、今やこのマース外相の態度が、ドイツの主要な政治家の中では中国にかなり厳しいものとして映るのは、メルケル首相(CDU・キリスト教民主同盟)があまりにも中国に近しく、対中政策を卑屈な叩頭政治にしてしまっているからだ。

〔PHOTO〕Gettyimages

このニュースのあとで同テレビ局のホームページを見たら、この王毅外相の訪独についての詳しい記事が出ていた。こちらは、これまでになく、歯に衣を着せぬ率直さで中国批判を展開している。タイトルは「中国に対する幼稚な思い込みからの決別」。

https://www.zdf.de/nachrichten/politik/kommentar-china-berlin-100.html

記事のリードは「王毅外相はヨーロッパ訪問で、恐喝し、威圧する中国を見せつけた。彼は、『中国に対する幼稚な思い込みからの決別』という方向転換を加速させてくれるかもしれない」。

ドイツ政府はここ20年間、交易が盛んになれば、中国は自然に民主化されるという理屈をかざして商売に励んできた。それが正しくなかったことは、すでにここ10年ぐらい明らかなのだが、しかし、産業界の意向もあり、これまで軌道修正は意識的になされなかった。つまり、中国が勝手に民主化すると、ドイツ人が幼稚に思い込んでいたわけでないということは、ここで付け加えておきたい。

記事を読んでみると、ウイグルで100万人が収容所に入れられていることも、香港で人権や協定が破られていることも、チェコの議員団が台湾を訪問したあと王毅外相に恐喝されていることも、中国が強硬に売り込んでいる5Gのファーウェイが、ウイグル人の監視と抑圧に多大な貢献をしていることも、全部書いてある。

 

そればかりか、「特にメルケル首相とアルトマイヤー経済相は、北京の怒りを買って経済的な不利益を被ることを恐れて、今でもシャープな批判は躊躇っている」とメルケル批判まで入っていたのにはビックリ。これまでにはなかったことだ。ドイツメディアで、何かが変わった!と私は感じた。