危険な「オンライン表示」

ところが、安心できたのは一瞬だけだった。

百合は着席するや否や、残っていたカクテルを無言のまま飲み干すと急に真顔で直彦を見たのだ。

「ねぇ、ナオさん」

低い声のトーンに怯え、とっさに身構える。すると百合は、瞳を泳がせる直彦をまっすぐ見据えて静かに言った。

「さっき浮気してたでしょ」

「え……?浮気……?」

――何を言い出すんだ、いきなり。

「何のこと」とごまかし笑いを浮かべてみる。しかし百合は笑ってくれず、射るような目を向けてさらに低い声を出した。

「とぼけないで。私、見たの。ナオさんがオンライン表示になってるの」

「オンライン表示……?」

怪訝な顔で聞き返すと、彼女は黙ったまま頷く。

「もしかして知らなかった?アプリにログインしていると、プロフページの右上にオンラインって表示が出るのよ」

――そ……そんなものが……。

意識したこともなく見落としていたが、言われてみればそんなマークがあった気もする。

「私と一緒にいるのにアプリ見るなんてヒドイ」

「ご、ごめん……その、なんとなく見てただけっていうか別に深い意味は……」

しどろもどろになりながら慌てて弁解する。今夜は謝罪のつもりでやってきたのに、再び怒らせては元も子もない。

しかし次の瞬間、百合が今度は急にプッと吹き出した。

「ナオさんって本当に嘘が下手ね」

そう言うと、彼女はおもむろに身体を密着させ真横から直彦を覗き込んだ。

至近距離で見つめられ、思わずゴクリと唾を飲む。

ものすごい目力だ。気を抜くと吸い込まれてしまいそうな力を感じる瞳……。

数秒だったのか、数分だったか。しばし無言で見つめ合ったのち、百合の唇がゆっくりと動いた。

「私……ナオさんが好き。結婚前提でお付き合いしたいです」

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