新型コロナの影響で注目を集めている「マッチングアプリ」。スマホ一つで新たな出会いを探せるため、婚活の主流となりつつあります。

FRaU webでは、実際の取材に基づいた「アプリ婚活」のリアルを、共著作家の山本理沙さんと安本由佳さんによってノンフィクション小説としてお届け。アプリの「モテ技」テクニックも満載です。

主人公はコロナ禍で孤独を極め、本気でアプリを始めたアラサー男女。「結婚とは」「幸せとは」について見つめ直していくなかで、果たして二人はベストパートナーにたどり着けるのでしょうか?

【これまでのあらすじ】
結婚に焦る武田留美(32歳)はマッチングアプリを始め、年下の商社マン・直彦と出会いつつ婚活に精を出すが、イケメン経営者にデート中に食い逃げされ落ち込む。さらに軽薄なマッチングを繰り返す中、日系アメリカ人・ジェームズと出会うが、サイコパス発言に衝撃を受けるのだった。
これまでの連載「本気でアプリを始めたら」を読みたい方はこちら

アプリマスター「とくちゃん」の正体

『プレゼントを贈られた際の女性の反応は非常に重要である。“高級品にオロオロ、安物に感激”は基本動作だが、上級者は……』

近所のカフェでコーヒーを啜りながら、徳光は素早くスマホに指を走らせる。

Twitterの呟きは必ず1分以内に書ききると決めている。プロのアルファツイッタラーは、深く考えた文章ではなく、ただ息をするように呟かなければならない。

つい先日、徳光のTwitterのフォロワー数は5万人を超えた。

最近はマッチングアプリのノウハウを呟いていたが、気づけばフォロワーから「アプリマスターとくちゃん」と崇められるようになり、Twitter界ではちょっとした有名人だ。

男女の心理戦について書いた有料noteの売上もかなりのもので、脱サラも夢ではないかもしれない。

「とくちゃん、お待たせ……」

声の方を振り向くと、留美が生気のない顔で立っていた。

――やっぱりな……。

詳細を聞かずとも、彼女の身に何が起きたのかだいたい分かる。

男女関係というのは、一度厄介な状況に陥ってしまうと、シンプルな幸せにたどり着くのが難しくなる。いわゆる「迷走」や「拗らせ」という状態だ。

まるで、昔の自分を見ているようだ。

徳光は小さく溜息を吐くと、留美に席を促した。