夏と言えば肝試し。その中でも「廃墟」は定番スポットとして人気が高い。私は廃虚愛好家として、これまで日本中の廃虚を訪れて写真を撮影してきた。誰も住まなくなった廃屋から、潰れてしまったホテルまで、その数は数百に上る。
中でも訪れると必ず恐怖を覚えてしまう廃虚がある。確実にそこで「人間が亡くなった」廃墟、すなわち「廃病院」だ。どんな病院でも少なからず患者の死は起こりうるし、それを意識するだけで、たとえ心霊現象がなくとも不気味に感じてしまう。
残暑が厳しいこの時期に、私が訪れた廃病院の中でもとりわけ印象に残った選りすぐりの6件を、実際の写真とともに紹介しよう。これで少しでも背筋をゾクゾクさせてもらいたい。
A精神病院(埼玉県)
実際に起こった事件が原因で閉鎖された精神病院だ。数十年間にわたって、組織ぐるみで身寄りのないホームレスを「強制入院」させて不必要な「治療」を施し、国から診療報酬を不正に受給していたとされる。患者の中には、不必要な手術が原因で亡くなったり、地下の個室に閉じ込められて精神を崩壊させられたりした方もいた。
20年ほど前に職員の内部告発によって事件が露見して、捜査の手が入った。立件された事件の被害者は約40人だが、実際はその数倍の方が無念の死を遂げていると思われる。その後病院は閉鎖された。
実際に訪れて衝撃を受けたのは、地下の重症患者の個室だ。そこは刑務所以下の環境だった。トイレには便座すら存在せず、足を置く板とただ排泄するための穴しかない。鉄の扉には食べ物を差し入れるための四角い穴が開いている。コンクリートが剥き出しの壁には無数の褐色染みがあり、それが血なのか排泄物なのかはわからない。