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2068年、パラリンピックがオリンピックの記録を逆転する日

最新科学に支えられたスポーツの進化

スポーツと科学の進化の現状

様々なジャンルのスポーツは、国内外を問わず広く人気であり、コロナ禍においては、多くの人がスポーツロス状態となっている。

スポーツの中でも、三大メジャーイベントと言えば、FIFAワールドカップ(サッカー)、ラグビーワールドカップ、そしてオリンピック・パラリンピックであり、世界中の熱い視線が送られる。これらメジャーイベントの主役は言うまでもなくアスリートである。

アスリートが繰り広げるパフォーマンスは、観ているものを驚かせ、感動させ、歓喜の渦に巻き込む力を持っている。私たちは世界レベルで競い合うアスリートが主戦場とするスポーツを、ハイパフォーマンススポーツ(HPスポーツ)と呼んでいる。

筆者は、HPスポーツを、スポーツ科学、医学、情報の面から支える役目を担う、国立スポーツ科学センター(JISS)のセンター長を務めている。この記事ではスポーツと科学の進化の現状の一端を紹介したい。

より速く、より高く、より強く

HPスポーツの世界を覗いてみると、その進化はめざましいものがあり、高速化と高度化を続けていることに驚く。そのルーツは、オリンピック憲章に見いだすことができる。オリンピック憲章には、ラテン語で「より速く、より高く、より強く(Citius-Altius-Fortius)」と、そのモットーが記載されている。近年のオリンピックは、この大志を具現化すべく進化を遂げてきた。

1896年のオリンピックにおける100メートル競走のスタートの様子 Photo by gettyimages

世界最速を競い合う陸上、競泳等の記録の変遷を見てもわかるように、高速化は止まるところを知らない。陸上男子100メートル競走では、1964年の東京オリンピックの頃は10秒0が世界記録であった。その後は9秒台の争いとなり、現在の世界記録9秒58である。

計測の単位一つとっても、10分の1秒から100分の1秒と、56年前とは1桁違うわけだが、そこにも科学の進化(計測テクノロジーの進歩)を感じることができる。スポーツバイオメカニクスというスポーツ科学から筋肉など身体の使い方が研究され、走法などの分析技術が進むことで、スピード化も進んできたわけだが、計測が正確に細かくできることも、高速化の一因と思われる。

また、水泳競技の高速化の要因には、抵抗を減らした高速水着の開発やスタート台の変化といった、科学的な研究をもとに開発されたマテリアルの進化の影響も大きい。