「教える」から「学ぶ」へ

このほかにも、多くの結論を見出した。
大人に圧迫されず、心地いい空間に身を置くことが学びの意欲を引き出すこと。
「教える」から「学ぶ」、そして「学び合う」まで到達するのが指導者の責務であること。
成長できる環境作りや学習効果を高める工夫をしているかを忘れないこと。

ビジャレアルは、10名の心理学者をクラブで雇用している。スペインリーグでも圧倒的に多いそうだ。これは科学的根拠に基づいたマインドセットで指導し、行動することが確かなクラブの成長につながると考えられているからだろう。

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佐伯さんの、以下の言葉が印象的だ。
誰かに指摘されてではなく、自ら気づいて得た学びのほうが大きいのです。だから、指導者も自分のことを常に俯瞰で見られるようになろうと言い合っています」

客観的であろうと努める大人のそばには、自らを客観視できる子が育つはずだ。心が揺れたとき、ピンチのときも内省できる。道に迷ったとき、グーグルマップのアイコンを押せば「現在地」に戻るように、俯瞰で自分を見られるだろう。

久保にとって、佐伯さんとの邂逅は大きな財産になるはずだ。

久保は現在19歳。彼の華麗な足さばきは、瞬間的な決断力の賜物だ。学びを大切にする指導のもと、ビジャレアルでどのような活躍を見せてくれるのか、目を離せそうにない Photo by Getty Images
ⒸJ.LEAGUE
佐伯夕利子(さえき・ゆりこ)
1973年、テヘランに生まれる。2003年、スペインサッカー界では女性として初めて男子リーグ「プエルタ・ボニータ」(スペイン3部リーグ)の監督に就任。その傍ら、現地サッカー専門誌等にコラム寄稿、また地元テレビ局の試合実況解説も務める。
2004年から2年間はアトレティコ・マドリッド女子チーム監督やスカウティングスタッフ・普及育成副部長等を務め、リーグ優勝に貢献。2007年、バレンシアCFと契約、チーム育成の中枢を担う強化執行部のセクレタリーとして活躍。スペイン国王杯優勝にも大きく貢献。その実績を高く評価され、『ニューズウィーク日本版』で『世界が認めた日本人女性100人』にノミネートされる。
2008年、ビジャレアルCFと契約、育成部に所属。トップチーム以下の全てのカテゴリーを育成強化し、将来のスペイン代表を育てる重要なポストを務めた後、2009年8月にはユースAチームのコーチングスタッフアシスタントとして、現場に復帰。2010年からはビジャレアルレディースチームの監督に就任するなど、前季リーグ5位のクラブをけん引している。2020年3月からJリーグ常勤理事。