人格否定宣言の効果

まだ当時、メンタルヘルスについて、世間の理解は進んでいなかっただろうし、まさかこれだけ優秀な雅子さまが心の病となるはずもないという思い込みもあったのかもしれない。それでもその原因がストレスにあり、治療が必要なことを、雅子さまのそばできちんと認識していたのが、当時の皇太子殿下だった。

2004年5月、皇太子殿下がデンマーク・ポルトガル・スペインと3ヵ国ご訪問する直前の会見で、雅子さまの体調不良について言及し、「雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です」と述べられたのだ。この発言は物議をかもしたし、秋篠宮さまや天皇陛下との軋轢もささやかれたが、しかしそれによって心の病の原因となる雅子さまの環境が明らかになったことは間違いない。

2004年5月22日、単独スペインにわたり、公務についた皇太子殿下 Photo by Pascal Le Segretain/Getty Images

そして7月30日には、雅子さまが適応障害であると発表された。雅子さまは専門医の治療を受けられることになった。

2004年9月、天皇皇后両陛下のもとへ行くために久しぶりに外出された雅子さま Photo by Getty Images
2004年11月17日に撮影された、皇太子ご一家の近況。専門医の診察も受けられるようになっていた 写真提供/宮内庁

2005年12月9日には「東宮職医師団見解」が公表され、病名と治療方針、現在のご病状、環境面のストレスなどについて、詳しい報告書が出された。平成22年度の東宮職医師団見解にはこのように書かれている。

当時の妃殿下のご病状の程度は,精神的・身体的エネルギーが低下されてお住まいからお出になることもできないほどに深刻なものでした。そうしたご病状に関しまして,東宮職医師団は,妃殿下の受けてこられたストレスが大きいことによるものと判断しました

しかし、病名が公表されてもなお、ご公務ができないことに対して「怠け病」などと報じるメディアもあった。いまでこそカウンセリングに行くことはコソコソする必要がない重要なことだという認識が定着しつつあるし、回復のためにはずっと静かにしているよりも、仕事とは離れた行動も重要だと認識されるようになってきたけれど、「なぜご公務ができないのに愛子さまと遊ぶことができるのか」などという声もあったという。認知療法や認知行動療法といった治療内容への理解も深まっていなかったのだ。