〔PHOTO〕gettyimages

安倍首相の持病「潰瘍性大腸炎」が、その昔「こころの病気」とされたワケ

米国で「不幸な歴史」をたどってきた

病気のイメージの歴史

病気は、人間の身体に影響する生物学的なプロセスであるだけではなく、個々人の生きられた経験であり、社会的にさまざまな意味をまとう。

そこで、医学史のなかでの病気は、病気そのものの流行や増減として扱われるだけではなく、病気のイメージの変化としても研究されてきた。

たとえば、18〜19世紀の西洋での結核は、ロマンチックな病気とされ、上品さや繊細さ、そして内に秘めた情熱を表すものとして神話化されていた。

当時は治療法が無く、しばしば結核が死に至る病であったことは、「佳人薄命」や「夭折の天才」というイメージと結び付けられていた。

〔PHOTO〕iStock
 

もちろん、病気はこうして美化されるばかりではない。

エイズや梅毒のような性行為感染症は、売買春などを連想させることもあって、道徳的な罪のイメージと結び付けられてきた。

じっさいには感染力の弱いハンセン病の病者たちが差別され施設に閉じ込められてきたのも、「天刑病」や「業病」というネガティブな病気のイメージがあるからだ。
こんにちの日本で、新型コロナウイルス感染症になった人びとが世間に謝罪するのも、そこに「自己責任での予防をしなかった不注意と無責任」とのイメージがこびりついているからかもしれない。