このギャップを明確に意識したのは、6月始め。韓国のゴールデングローブ賞と言われる百想芸術大賞の授賞式だった。大ヒット作にふさわしく様々な賞にノミネートされた『愛の不時着』は、北朝鮮の主婦役を演じたキム・ソニョンが助演女優賞を、主演のヒョンビンとソン・イェジンがTikTok人気賞を取ったが、作品賞などは取らなかったのである。ちなみに「人気賞」はファン投票で決まり、海外視聴者が多数参加したようだ。

つまり、日本では絶賛された『愛の不時着』が作品賞を取れないほど、韓国のドラマは質が高いと考えられる。

そして先述の記事を書いてから5カ月、私はさまざまな韓国ドラマを見るなかで、「見慣れた人たち」の同作に対する反応を理解できた気がした。近年の韓国ドラマには、フェミニズム要素が入っているのが当たり前なのである。

フェミニズムをエンタメに織り交ぜた2作

例えば、恋愛サスペンス『ミスティ』。主人公は女性ニュースキャスターで夜9時のテレビニュースのアンカー、弁護士の夫とは仮面夫婦状態だ。ある時、昔捨てた恋人がアメリカでゴルファーとして大成功しソウルに戻ってくる。その元恋人が車の中で死んでいるのが見つかった。事故か殺人か。殺人だとしたら犯人は誰か。そんな謎解きをメインストーリーとしつつ、このドラマには、テレビ報道という「もう一つのメインストーリー」がある。

よくある恋愛ミステリーかと思いつつ見ていると、中盤以降で言論の自由や政治権力のメディアへの介入といった骨太のテーマを描くようになる。主人公と後輩女性記者はキャスターの座を巡って争うが、これは陳腐な「女同士の戦い」ではなく、報道の真価を問う展開の伏線になっている。

貧しいひとり親家庭で育った主人公が「公正な社会の実現」を目指し、狂気に近い執念で働く様子からは目が離せず、全体として、野心家の女性を肯定的に描いている。主演のキム・ナムジュは、本作の演技で2018年の百想芸術大賞・テレビ部門で女性最優秀演技賞を受賞した。